Miles Davis / In Europe

 フランス、アンティーブにおけるライヴ録音盤。
 オリジナル LP は全5曲入り。アナログ・レコード両面で60分以上収録という長時間演奏で、その代わりやや音量が小さめであった。それでも当初は編集によって演奏がカットされていたのだが、2005年リマスター盤は、何曲か演奏時間が長くなり、中間に1曲 "I Thought About You" が追加されている。また、オープニングの司会者によるアナウンスがトラック (1) と表記されたため、全部で7トラック80分間収録になった。
 フランス国営放送(ORTF)によるモノラル録音は高音部がこもりがちで決して良いとはいえないのだが、リマスター盤では音質がかなり改善され、楽器ごとの音のバランスが非常に良くなった。また、客席の歓声やざわめき、演奏中の笑い声などまでくっきり聞こえるようになっている。
 (2) はマイルスの「枯葉」のライヴ録音の中では断トツのベスト。(3) も翌年の "Live In Berlin" よりずっと優れていると思う。
 (5) はジョージ・コールマンのベスト・パフォーマンス。63〜64年録音のコールマン参加作品の中でも、本作は彼の活躍が目立っている。こういう複雑な曲を崩さずにきっちりと吹くのが彼の持ち味なのだ。(コールマンは、後にミュージシャン仲間から嫌われてしまったようで、ハービー・ハンコックの『処女航海』(1965年録音)以降、まったくお呼びがかからなくなるのだが、音楽性の問題よりも彼の性格、人柄に原因があるのではないかという気がする。)
 後半、(6) と (7) はいずれも16分を超える長尺演奏。しかし、全体の構成、ソロの起承転結がしっかりとしていて、飽きさせず最後まで盛り上がる。