Miles Davis / Kind Of Blue

Kind of Blue

Kind of Blue

 "Milestones" (1958年録音)に続いて、《モード奏法》を本格的に取り入れたアルバム。ハード・バップに比べると、コード進行が極端にシンプルになり、多くのスケール(音階)を組み合わせた複雑なアドリブ・ソロが展開されるようになった。その一方、本アルバムにおいては演奏者全員が抑制のきいた、格調高いプレイを行っている。
 全5曲入り。CD は別テイク1曲が追加されている。全曲オリジナル。作曲者はすべてマイルス名義になっているが、(3) と (5) はビル・エヴァンスの作曲(または共作)といわれている。5曲ともミディアムまたはスロー・テンポで、ソロも含めてフレーズが耳に残りやすく、《全曲脳内再生可能なアルバム》 だと思う。(ロックの名盤だとときどきこういうのがあるが、ジャズでは珍しいことなのだ。)
 1997年リミックス盤(Columbia / Legacy レーベル)の解説によると、本アルバムの (1) 〜 (3) は録音時に回転速度の遅いテープレコーダーで録音されたため、レコード化の際には逆に速度がはやく、ピッチが高くなってしまったとのこと。リミックス盤以降に発売された CD では、オリジナルのピッチが再現されているらしい。(演奏時間も3曲あわせて、数十秒長くなっている。)もっとも、マスター・テープのピッチがおかしいというのは当時のジャズ・アルバムでは珍しいことではなく、たとえばマイルスでは "At The Blackhawk" などひどいものである。
 また、同リミックス盤は、原プロデューサー*1 のクレジットから Teo Macero の名前が消え、Irving Townsend のみになっている。
 さて、演奏内容だが、ほとんどの曲が一発録りだったそうで、どの曲も緊張感が感じられる。しかも、上品な色気を感じてしまうのだ。特にコルトレーンキャノンボール
 ボーナス・トラックの (6) は蛇足。完成された (5) と同じ曲を2回続けて聴きたいとは思わない。

*1:このシリーズは原プロデューサーと新版プロデューサー両方の名前が併記されている