Miles Davis / Miles

 プレステッジ・レーベルから発表されたマイルスのレギュラー・クインテットによる第2回スタジオ録音アルバム。第1回録音を含む "Round About Midnight" (コロンビア)に先がけて発売された。ジャケット裏面に The New Miles Davis Quintet と大きく書かれていて、邦題も『ニュー・マイルス・デイヴィスクインテット』になっているが、本来のタイトルはシンプルに "Miles" である。
 同じメンバーのクインテットによるアルバムは全部で6枚出ているのだが、本作は今ひとつ地味である。シンプルなジャム・セッション風の演奏が大半を占めているせいもあるが、(1) がミディアム・スロー、(2) がスロー・バラードという曲順のためでもあるだろう。全6曲入りだが、後半は曲も演奏もぐっと良くなる。
 (1) はポール・チェンバースのベースのピッチが狂っていて、今の感覚で聴くとちょっとあり得ない感じ。こういう演奏をアルバムの冒頭に収録したということは、マイルスやボブ・ワインストック(プロデューサー)など誰も指摘しなかったのだろうか。
 (5) "The Theme" はアート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズのライヴでエンディング・テーマとして使用されていた曲(曲といっても冒頭のフレーズだけ決まっていて、あとは全部アドリブなのだが)。マイルス作曲とクレジットされているけれども、アート・ブレイキーのアルバムには「トラディショナル」と記載されていて、どちらが本当かわからない。なお、マイルス自身のライヴにおけるエンディング・テーマ(タイトルは同じ "The Theme" という)とは別の曲である。
 (6) はベニー・ゴルソン作曲のジャズ・スタンダード。ピアノ抜きで始まる管楽器ユニゾンのテーマが渋い。