Miles Davis / Bag's Groove

BAGS GROOVE

BAGS GROOVE

 1954年6月と同年12月、二つのセッションを収録したアルバム。ただし、12月録音はタイトル曲(2テイク収録)のみである。
 (1) と (2) はミルト・ジャクソン作曲であり、タイトルの "Bag" はミルトのニックネームであり、ジャケットにも大きな文字で BAGS GROOVE と書かれている。このきわめて単調なブルース曲が、アルバムのトップに2テイク連続で収録されているのは、ご覧のとおりプロデューサーによる「ミルト・ジャクソンごり押し」なのだ、というのが僕の見解である。
 とにかく、タイトル曲がつまらない。単調で、ノリが少なくて、メンバー同士の絡みもほとんどなくて、セロニアス・モンクの出番が少なくて、だらだら長い演奏が合計20分も続くのだ。(テイク2では、ケニー・クラークがドラム・スティックを落とす音が聞こえる。彼にしては珍しいことだが演奏に集中していないのである。)同じ12月24日のセッションでも、もっとはるかに素晴らしい演奏は、"Miles Davis And The Modern Jazz Giants" に収録されている。
 実は、本アルバムはソニー・ロリンズを加えた (3)〜(7) が聴きどころなのである。ロリンズは (3) "Airegin"、(4) "Oleo"、(6) "Doxy" と3曲も新曲を用意してきている。いずれも、のちにジャズ・スタンダードとして多くのミュージシャンに取り上げられるようになる名曲であり、マイルスもグループのレパートリーに加えている。もちろん、マイルスとロリンズのソロもノリノリで素晴らしい。
 僕は特に "Oleo" という曲が大好きなのだ。全員が一斉に揃うことのない、引き算ばかりで構成されたようなアレンジである。B メロで入るピアノの合いの手も良いし、ベースもドラムも抜群にスイングしている。