Herbie Hancock & Wayne Shorter / 1+1

1+1

1+1

  • 1997年3月録音。
  • Heibie Hancock (p), Wayne Shorter (ss)
  • 1996年7月17日、ウェイン・ショーターの妻アナ・マリアと彼女の姪ダリラを乗せた飛行機が墜落し、二人は死亡。公演中だったヨーロッパ・ツアーはキャンセルされたが、翌月にはツアーを再開。ショーターは何度目かの来日公演を行っている。同年11月25日、ワシントンD.C.ケネディ・センターで開催されたイベント Celebration Of America's Music で、ショーターは聴衆の前でハービー・ハンコックとのデュオ演奏を行ったが、ステージ終了後、同イベントの出演者パット・メセニーから「君たち二人はデュオ・アルバムを作るべきだ」と勧められたのがきっかけでアルバムを制作した、とハービー・ハンコックは語っている。*1
  • このような背景で作られたアルバムが "1+1" だ。ジャズ・ミュージシャン二人によるデュオ・アルバムの名盤というのは決して数多くあるわけではないが、本作はその中でも名盤中の名盤であり、ハンコック、ショーターいずれのキャリアにおいても忘れることのできない作品だと思う。
  • 全10曲入り。(1), (2), (7) がショーター作曲。(3), (6), (10) がハンコック作曲。(このうち、(6) と (7) はショーターのアルバム "Native Dancer" 収録曲の再演。)(5), (8), (9) は二人の共作。また、(4) はケネディ・センターのイベントで演奏された曲で、オランダのジャズ・ピアニスト、ミシェル・ボースラップという人の作品である。
  • ショーターの吹くソプラノの音はどこまでも透き通っていて美しい。また、ソプラノの音をさらに包み込むように弾くハンコックのピアノの音も素晴らしいと思う。リズミカルな曲はほとんどなくて、従来のモダン・ジャズやフュージョンみたいな音楽とはまったく違うだが、どちらかというとブラームスのヴァイオリン・ソナタを聴いているときのような幸せな気分になれる至上の音楽である。
  • (2) はショーターの後のライヴ・レパートリーに欠かせなくなった重要な曲。同じようなフレーズが少しずつ形を変えながら登場する不思議な音楽である。
  • (10) はピアノが R&B 風のリフを連ねるファンクっぽい曲だが、わずか2分足らずで終わってしまう。ああ、もっと聴いていたいのに!

*1:"1+1" CD 解説より。