Wayne Shorter / Footprints Live!

Footprints Live

Footprints Live

  • 2001年7月14〜24日、ライヴ録音。
  • Wayne Shorter (ts, ss), Danilo Perez (p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)
  • 1999年2月、ウェイン・ショーターは亡くなった妻アナ・マリアの友人であるキャロライナと結婚する。ジャズ・ミュージシャンの私生活と音楽の関係というのはよくわからないことが多いのだけれど、ショーターの場合は、結婚生活や子育て、家族の死などといったトピックが、長い目で見て音楽活動の大きな節目と重なっているようだ。ショーターは3度目の結婚の翌年(2000年)、新しいグループ「ウェイン・ショーター・カルテット」を結成した。そして、21世紀の今日に至る新しいピリオドが始まったのである。
  • 新バンドのメンバーは、パナマ出身のピアニスト、ダニーロ・ペレス(1965〜)、チック・コリアのバンド出身ですでにジャズ・シーンで長く活躍していたベーシスト、ジョン・パティトゥッチ(1959〜)、そして、1990年代にジョシュア・レッドマンのグループで登場したドラマー、ブライアン・ブレイド(1970〜)の3人。いずれもショーターとは30歳前後も年の離れた若手実力者だ。
  • 2001年のヨーロッパ・ツアーの録音を集めた本アルバムは、翌年に発表された。曲目はすべて過去のアルバムで発表済みのものばかりである。ショーターは、このグループのコンセプトについて、次のように語っている。*1

「このグループでやりたいのは、コンポージングではなく、その反対のデ・コンポージングなのだ。」

  • かつてのショーターは、曲の構成やアレンジをがっちりと固めた作品を多数発表してきたが、本アルバムでの演奏は4人のメンバーによる即興演奏が中心になっている。8ビートや16ビート(4ビートは少ししか出てこない)、変拍子など複雑なリズムがガンガン出てくるが、すべて集団即興によるものであり、演奏するたびに全く違った展開になって行く。それだけ高い演奏能力を持ったメンバーだからこそ可能なわけだが、ときにはフリー・ジャズに近い荒々しさまで到達する勢いのパフォーマンスは、聴衆を圧倒、興奮させたのである。(このライヴ盤ではときどき観衆の叫び声が聞こえる。)
  • 彼らが2002年に来日したとき、僕はライヴ演奏を聴いたが、本当に素晴らしかった。真夏の東京スタジアムに涼しい風が吹くとき、ソプラノ・サックスのロング・トーンが鳴りわたる。ショーターは夜空の風にまで反応して、楽器を演奏していたのだ。
  • ラテン音楽の色の濃いロペス、重低音でビートを刻むパティトゥッチも素晴らしいが、ブレイドの重たいドラム(あんなにシンプルなドラム・セットでどうやってこんなにすごい音が叩けるのだろう!)は爆発的にすさまじい。
  • ショーターは長い経歴の割に、自己名義のグループを結成してライヴ活動を行った期間は非常に短かった(1980年代後半以降、単発的に何度か活動していたようだ)。すでに40年以上のキャリアをもつ彼が、ようやく結成したレギュラー・カルテットは、現代最高のジャズ・グループだと自信をもって言えると思うのである。

*1:CDの日本語解説より引用。