ジェネシス/もうひとつのジェネシス


  • 1992年のツアーにて録音されたジェネシス4度目のライヴ・アルバム。『もうひとつのジェネシス〜ライヴ』(1992年発表。"The Way We Walk, Volume One: The Shorts")および『もうひとつのジェネシス〜ライヴ(後編)』(1993年発表。"The Way We Walk, Volume Two: The Longs")というタイトルで、2回に分けて発売された。なお、前者の邦題には「前編」と記されていない。CD を購入すると、中に「後編」の発売予定を記した円型のチラシ(英語)が入っている仕組みだったのである。(ちなみに、1998年には曲順を入れ替えた2枚組 CD も発売されているからややこしい。)
  • "The Shorts"、"The Longs" という原題のとおり、前者はシングル・ヒットを中心とした短い曲が、後者は10分以上の長い曲が収録されており、後者のほうが収録時間が長い。
  • メンバーは、フィル・コリンズ(vo, ds)、マイク・ラザフォード(g, b)、トニー・バンクス(key)、ダリル・スチューマー(g, b)、チェスター・トンプソン(ds)。ダリルとチェスターは10年以上サポート・メンバーとしてジェネシスフィル・コリンズ・バンドのライヴで共演してきた人たちだが、ジェネシスのメンバー3人と同列にクレジットされ、さらにジャケットに写真まで掲載されたのは初めてのことである。
  • さて、演奏内容だが、どの曲も異様に盛り上がっていてテンションが高い。ライヴ・バンド、ジェネシスの到達点というべきパフォーマンスである。改めて聞き直してみたら、少なくとも5曲はスタジオ録音時よりもキーを下げているのだが、まったく気にならず、むしろこちらのほうが正しいのではないかとすら思えてくるのだ。*1
  • 上の動画は "Old Medley : Dance On A Volcano/The Lamb Lies Down On Broadway/The Musical Box/Firth Of Fifth/I Know What I Like/That's All/Illegal Alien/Follow You, Follow Me"。「後編」の冒頭に収録されている長尺メドレー*2である。聴きどころは 7:55 あたりから始まる "Firth Of Fifth"。トニー・バンクスのキーボード・ソロの後に登場するダリル・スチューマーのギター・ソロがノリノリである。1980〜90年代のジェネシスの曲はリズム・マシンを用いたものが多いのだが、ここではそのようなギミック抜きで、速くなったり遅くなったりバンド全体がテンポを完全にコントロールしていて、すごいとしかいいようがない。
  • 動画の後半、フィル・コリンズがフロントに立っているときの《無駄な煽り》はカッコ悪い。だが、当時のフィルは何をやってもウケてしまう、というキャラクターだったから、許されたのだと思う。
  • しかし、フィル・コリンズは80年代から続いたこのような喧噪状態から決別することになる。ジェネシスは活動を休止。1993年に発表した陰鬱なソロ・アルバム "Both Sides" には、かつてのオーラは感じられない。そして1996年、フィルはジェネシス脱退を表明する。


Live: We Walk 1--Shorts

Live: We Walk 1--Shorts

Live: We Walk 2--Longs

Live: We Walk 2--Longs

*1:2007年に発表された再結成ライヴ盤ではさらにキーを下げて演奏しているのだが、そちらは論外。

*2:動画は CD とは別の日のライヴのようだ。