ジェネシス/ウィ・キャント・ダンス


  • 1991年発表。"We Can't Dance"。
  • 前作から5年ぶりのスタジオ録音盤。この5年間に何があったかというと、コンパクト・ディスクの普及*1である。A面・B面という区切りがなくなり、長い曲を遠慮なく収録できるようになった。収録時間も大幅に増えた。*2そして、本アルバムも10分以上の曲が2曲、トータル71分の大作となったのである。
  • 90年代前半のロックの CD は収録時間の長いのが特徴だが、中には冗長なもの、ボーナス・トラック等のオマケをつけてごまかしたものが多い。しかし、ジェネシスはさすがに優れた楽曲、全体を一気に聴かせる構成力をもった作品で、このアルバムを作り上げたのであった。
  • 長い楽曲が含まれているため、アマゾンのレビューなどには「プログレへの回帰」といったことが書かれているようだが、当時もまた今聞き返してみても、70年代的なプログレの要素は全く感じられない。むしろ、80年代以降のジェネシスが築き上げてきた《ポップ・ロックの拡張版》といった感じがする。
  • 上の動画は、"I Can't Dance"。イントロのギター・リフが印象的な曲だが、アルバム全体にこういうリズム・ギターの活躍が目立っている。(ギター・ソロはほとんどない。)なお、PV の中で黒い服を着たメンバーの3人が歩くカットが何度も出てくるが、この場面は次作 "Live: The Way We Walk" のジャケットに用いられている。
  • フィル・コリンズは1996年にジェネシスを脱退した。結果的に、本作はフィル・コリンズにとって最後のスタジオ録音盤になってしまったわけだが、まだこの時点では誰も彼の脱退など(おそらく彼自身も)考えたことはなかったのではないかと思う。


We Can't Dance

We Can't Dance

*1:日本とアメリカでは1987年頃にコンパクト・ディスクのシェアがアナログ・レコードを上回ったと記憶する。

*2:1990年代前半くらいまでのCDは74分まで収録できた。現在は約80分収録可能である。