ルービンシュタイン/ラフマニノフ 『パガニーニの主題による狂詩曲』

 ラフマニノフがピアノと管弦楽のための作品 『パガニーニの主題による狂詩曲』(通称:パガニーニ・ラプソディ)を作曲したのは1934年のことだった。この曲、TVCM や映画などに何度も使われているので、耳にしたことのある方が多いと思う。フィギュア・スケートでは荒川静香が以前使用していたのも有名だ。(フィギュアの人たちはラフマニノフが好きすぎる!)
 さて、このラプソディの元ネタとなったニコロ・パガニーニ(1782-1840)作曲 『カプリース第24番』 を聴いてみよう。以下の映像はヤッシャ・ハイフェッツのヴァイオリン。原曲は無伴奏だが、ここではピアノ伴奏がついている。

 この曲の冒頭の旋律を借用して、変奏曲(ヴァリエーション)を作るというのは、19世紀以降の多くの作曲家が行っていて、有名どころではリストやブラームスも同様の 『パガニーニ・ヴァリエーション』 を発表している。
 ラフマニノフがラプソディを作曲したのは20世紀に入ってだいぶ経ってからだが、彼の場合、非常に変わった作曲方法をとっている特色がある。例えば、以下の 「第18変奏」 は一見パガニーニとは全く関係ないように聞こえる。(ルービンシュタイン(ピアノ)、ライナー指揮、シカゴ交響楽団の演奏で、1956年録音。)

 冒頭の美しい旋律は、パガニーニの主題の一部を上下反対にしたものだと言われているのだが、聴いているだけではさっぱりわからない。そこで、譜面に起してみた。(半音記号は省略。)

 なるほど、鏡に写してみるとそっくりである。こんなやり方で 「第18変奏」 を作ってしまったラフマニノフは、天才を通り越して紙一重としかいいようがないだろう。


 最後に、ルービンシュタインによるパガニーニ・ラプソディを全曲通して聴いてみたい。前半は 「序奏」 から 「第16変奏」 まで切れ目なしに演奏されている。

 後半は 「第17変奏」 から 「第24変奏」 まで。例の 「第18変奏」 は 1:30 から 4:13 までである。


ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第2番&パガニーニ狂詩曲

ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第2番&パガニーニ狂詩曲

 1956年録音の名盤。最初期のステレオ録音だが、きわめて高音質。アメリカンなオーケストラ・サウンドが耳に心地よい。