ルービンシュタイン/ブラームス 『ピアノ協奏曲第2番』

 アルトゥール・ルービンシュタイン(1887-1982)は偉大なピアニストだが、レコードを聴くかぎり当たり外れがあり、その落差が著しい。全般に大雑把な感じがするのだ。しかし、その分大当たりのときの感動も大きいのである。


ブラームス:P協奏曲第2番

ブラームス:P協奏曲第2番

 ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団演奏によるブラームス作曲 『ピアノ協奏曲第2番』 が録音されたのは1971年。ルービンシュタインの84歳のときの演奏である。彼がこの協奏曲を世界で初めて録音したのは1929年だったそうだ。また、1976年に彼が引退する直前に録音したのは、同じブラームスの 『ピアノ協奏曲第1番』 だった。ルービンシュタインにとって、それこそ生涯をかけて取り組んだライフワークが、ブラームスの二つのピアノ・コンチェルトだったのである。
 で、この演奏がやたらとアメリカンなのだ。第1楽章の1分半くらいから始まる管弦楽の響きはまるで映画音楽、それも恋愛映画などではなく、アクション映画や西部劇のような、そうだ 『荒野の七人』 みたいな感じの音楽なのである。ここにはドイツ・オーストリア的な厳しさはない。バックハウス/ベーム盤と比べると、スコーピオンズボン・ジョヴィくらい違う。
 ウェブ上に音源が見当たらないので、訳のわからない書き方になってしまい恐縮する。だが、このオーケストラがまた良いのである。明るくてリラックスできて、しかもわくわくする。そして、この安定感のあるオケの上を、ルービンシュタインのピアノがときにひらひらと舞い、ときに疾走する。ピアノの音が光り輝いているようだ。何度も聴き返したくなるブラームスである。