ブラームス:『ピアノ三重奏曲 第1番』

 ブラームス1854年、20歳のときに 『ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 Op.8』 を発表した。ところが、はるか後の1890年にこれを改作し、全体の長さを3分の2に短縮して再発表したのである。若い頃の初稿も現存するらしいのだが、現在ではほとんど1890年版のほうが演奏されるようになっている。ピアノ三重奏曲の第2番と第3番は、1880年代に作曲されているのだが、このような事情により、第1番も全く遜色がない、むしろ3曲の中で最も輝かしい作品として残されたのだ。
 ブラームスピアノ三重奏曲は、いずれもピアノ、ヴァイオリン、チェロが正三角形のように配置され、三者がそれぞれ対等にわたりあう構成になっている。以前、チェロ・ソナタをキャッチボールに例えたことがあるが、同じ野球に例えるならこちらは三人の内野手による見事なダブルプレーである。
 以下の映像は第2楽章スケルツォ。なんだかスケルツォばかり取り上げているみたいだが、こういうのが好きなんだから仕方ない。(演奏年代は不明だが、おそらく2000年前後と思われる。)

 演奏者は3人ともロシア人。マキシム・ヴェンゲーロフ(1974-)というヴァイオリニストは、実に気持ち良さそうに楽器を操る人だ。ピアノのエレーナ・バシュキロワ(1958-)はダニエル・バレンボイムの奥さんである。*1 そして、チェロはダンコーガイかと思ったらそうではなくて、ボリス・ペルガメンシコフ(1848-2004)という人だ。
 演奏はテンポ速め。0:39 のところでいきなりフォルテッシモでガーンと鳴らしたあと、チェロとヴァイオリンがツクツーン2連発をキメる。これはもう最高のキマりかたとしかいいようがない。そして、中間部の旋律の美しさ。三人ともノリノリである


ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番&第2番&第3番

ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番&第2番&第3番

 CD で聴くなら上の音盤(1976年録音)をおすすめしたい。スーク・トリオについては以前ふざけた記事を書いたが、このアルバムではヤン・パネンカ(1922-1999)というピアニストが参加しているので、ヨーゼフは二人である。
 演奏内容、音質ともに充実しているので、ぜひチェックしてみてください。

*1:二人とも再婚同士であり、彼女の最初の夫はギドン・クレーメル。そしてバレンボイムの最初の妻はジャクリーヌ・デュ・プレだった。