シルクハットの男
民衆を導く自由の女神 - 蟹亭奇譚 の続き。
id:yukitanuki 氏より、以下のブクマコメントをいただいた。
次元じゃねえよリンカーン大統領だよ
とんでもない誤解である。
「民衆を導く自由の女神」 が描かれたのは1830年。フランス7月革命の年である。絵の右端にも作者の署名の下に年号が記入されている。1809年生まれのエイブラハム・リンカーンは当時21歳、ミシシッピ川を下る舟で荷物を運ぶ肉体労働に従事していた。彼は全く無名の田舎者だったのである。
He was also skilled with an axe and a talented local wrestler, the latter of which helped give him self-confidence. Lincoln avoided hunting and fishing because he did not like killing animals, even for food.
若きリンカーンは地方のプロレスラーだった。「狩猟も魚釣りもしなかった」 という記述は、彼には銃を操った経験がなかったことを意味している。後に共和党所属の初代大統領になった経歴を考えるとユニークなエピソードだが、そもそも、貧しくて銃など買えなかったのではないか。
また、リンカーンがトレードマークとなっているひげを生やしたのは、1860年の大統領選のときのことである。Grace Bedell という11歳の少女がリンカーンに 「あごひげをはやした方が良い」 という手紙を出し、そのアドバイスに従ったのだ。
もちろん、リンカーンがひげを生やす際に、ドラクロワが描いた人物を意識したという可能性は否定できないだろう。だが、彼の才能が開花したのはその巧みな弁舌ゆえであって、銃の腕前によるものではなかったのだ。
シルクハットの男はドラクロワ自身だという説もある。*1 しかし、彼の自画像を見れば、全くの別人であることがわかる。
ドラクロワ自画像(1837年)
顔の話ばかりしていても仕方ないので、今度は男が持っている銃に注目してみよう。彼が抱えている銃は マスケット銃 と呼ばれるものである。弾を銃の先から込める古い銃だが、当時はこれが最新式だった。以下はマスケット銃の早撃ち映像である。
マスケット銃は軍用および狩猟用として普及したが、軍用の歩兵銃はおっぱいの女神が抱えている銃剣(先にナイフの刃がついていて、接近戦ではこれを用いる)のほうだから、男が持っているのは猟銃に違いない。
ルパンも石川五ェ門も銭形も、先祖が有名人という共通点がある。次元にだって射撃の名人の祖先がいたっておかしくはないだろう。次元は愛用のリボルバーだけでなく、狙撃銃や対戦車ライフルなどさまざまな武器を使いこなしている。ときどきわけのわからないメカを操縦することもある。それに彼はコナンの正体が工藤新一であることを知っている数少ない人物の一人でもある。
フランスの市民革命のときに、次元大介の先祖が活躍したとしても決しておかしな話ではないのである。
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