「大江光の音楽」

 「大江光の音楽」 は作曲家、大江光(1963〜) の作品を集めた CD(1992年録音)。一昔前に話題になり、テレビのドキュメント番組で取り上げられたりしたので、耳にしたことのある方も多いと思うが、敢えて CD のレビューを書いてみたい。

大江光の音楽

大江光の音楽

 全25曲中、6曲がピアノとフルートの二重奏であり、残りはピアノ独奏である。作風は純粋な意味でクラシック音楽(現代音楽ではない)であって、もしも作曲者のプロフィールを全く知らない人に 「モーツァルトの弟子が作ったんですよ」 と言って聞かせたら、信じてしまいそうな内容だと思う。前衛的な 「現代音楽」 が主流となっている昨今においては、きわめて貴重で個性的な作曲家といって良いだろう。
 本作は大江光が10〜20代の頃に作曲した曲を集めたアルバムで、作曲された年代や曲にまつわるエピソードが解説に詳しく書かれている。特に目立った楽曲があるわけではないが、耳に心地よく、さわやかな朝の BGM に最適な音楽だと思う。
 演奏についてはフルートが素晴らしい。一方、ピアノはどの曲も盛り上がりに欠け、凡庸である。ピアノ・ソナタの第2楽章ばかり続けて聞かされているような感じがするのは、作曲者のせいではあるまい。
 これだけの才能を持った作曲家なのだから、今後は歌曲に挑戦してみてはどうだろうか。あるいは、既存の自作曲に歌詞をつけてみるのも良いかもしれない。親の七光みたいな部分ばかり注目されるには、もったいないアーティストである。