『「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか』

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか (新潮文庫)

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか (新潮文庫)

 夏目漱石坊っちゃん』、芥川龍之介 『蜜柑』など、鉄道が登場する文学作品を取上げたエッセイ。昨年、ぱらぱらとめくっていただけだったので、今回は通読予定。田山花袋少女病』 という小説は、この本をきっかけに知り、青空文庫で読んだ(あれは傑作ですね)。

漱石、ジャムを舐める (新潮文庫)

漱石、ジャムを舐める (新潮文庫)

 似たような趣向の本に、『漱石、ジャムを舐める』 というのがある。
 「夏目漱石の小説に登場する食べ物」を切り口に、江戸・明治・大正期の食品、食文化について書かれたエッセイ集で、これも面白かった。著者は長年食品メーカーに勤めた専門家だが、本書を著すにあたって、さらに取材をすすめただけあって、実に様々な興味深いエピソードが書かれているのである。
 特に 『三四郎』は秀逸。小説の冒頭で、主人公が駅弁を食べる場面が出てくるのだが、果たしてこの駅弁はどの駅で買ったものなのか(!)、弁当のおかずの内容と明治30年代の鉄道時刻表から推理するというミステリー仕立ての展開に圧倒される。