川端康成 『新文章読本』

 昭和25年に発表された随筆。贋作説があり、現在絶版となっている。
 文章と文学について書かれた随筆だが、精神論的な主張ばかりで実につまらない。坪内逍遥から太宰治まで、古今の小説からの引用が多く、引用された作品については面白いものもあるのだが、それらについての筆者の感想が平板にすぎる。誰々の文章は新しい、と述べるなら、どの部分がどう新しいのか書かなければ、説得力がないだろう。
 たまたま上述のパーティのとき持って行ったので、猫猫先生にお見せしたところ、
「これは川端が書いたんじゃないから、読まなくていい」
と仰った。当時は他の人に書かせるようなことはよくあったのだそうである。