宮部みゆきを軽く9冊

 順不同。短編は読んでいません。

『龍は眠る』

龍は眠る (新潮文庫)

龍は眠る (新潮文庫)

 超能力者が登場する推理もの。読みやすいし面白いと思うのだけど、あとに何も残らない感じ。

『レベル7』

レベル7(セブン) (新潮文庫)

レベル7(セブン) (新潮文庫)

 記憶喪失もの。かなり長い小説だが、パズルを解いていく感覚で一気に読める。読み終わったあとに何も残らないというのは、良いんだか悪いんだか。


『魔術はささやく』

魔術はささやく (新潮文庫)

魔術はささやく (新潮文庫)

 複数の事件が断続して起こる。いくつかの事件同士は直接的な関係はなく、主人公をめぐる人間関係の中で咀嚼されていく。サブ・ストーリーや小さなエピソードの描き方は上手いと思うが、全体に未消化の部分が残る。


火車

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

 カード破産問題を正面から取り上げた社会派ミステリとして有名な小説だが、本作の読みどころ、面白さは、休職中の刑事による失踪中の一人の女性の追跡劇にある。
 僕はこの本を読んだのを忘れて、2回も買ってしまった。


『理由』

理由 (新潮文庫)

理由 (新潮文庫)

 ルポルタージュという手法を模したミステリ。他の宮部作品に比べるとやや読みにくく感じるが、内容よりも形式を重視したストーリー・テリングは見事。傑作だと思う。


模倣犯

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯2 (新潮文庫)

模倣犯2 (新潮文庫)

模倣犯3 (新潮文庫)

模倣犯3 (新潮文庫)

模倣犯(四) (新潮文庫)

模倣犯(四) (新潮文庫)

模倣犯(五) (新潮文庫)

模倣犯(五) (新潮文庫)

 文庫本全5冊という長さは思ったほど気にならない。しかし、中間部の心理描写(特に犯人の)が延々続く箇所はかなりしんどかった。
 警察の捜査によって犯人を追い詰めていく過程も細かく描かれているものの、事件は全く別の方法で解決し、いくつかの伏線は捨てられてしまう。また結末はきわめて後味が悪く、カタルシスが感じられない。(ないものねだりなんだけどね。)


『蒲生邸事件』

蒲生邸事件 (文春文庫)

蒲生邸事件 (文春文庫)

 時間旅行を扱った SF 長編。全体としてかなり面白いのだけれど、中盤に描かれる 《密室××事件》 を巡る推理・謎解きの部分が面白すぎて、後半の本論部分がかすんでしまっている。


『あかんべえ』

あかんべえ(上) (新潮文庫)

あかんべえ(上) (新潮文庫)

あかんべえ(下) (新潮文庫)

あかんべえ(下) (新潮文庫)

 幽霊の登場する時代もの。怪談ではなく、どちらかというと人情噺に近い。子供向けに書かれているようだが、これは悪い意味で子供だまし。文庫本2冊に値する内容ではない。


『スナーク狩り』

スナーク狩り (光文社文庫)

スナーク狩り (光文社文庫)

 ストーリー・テリング、情景描写、心理描写いずれも満点をつけたい大傑作。 100ページを過ぎたあたりから一気に加速し、最後まで一直線に突っ走る展開は素晴らしい。