読書について考える

 「定年退職して自分の時間が増えたら、たくさん本を読みたい」とおっしゃる50代の方々の話を最近よく耳にする。しかし、僕の両親をはじめ、身近な人たちを見ると、60歳を過ぎてから飛躍的に読書量が増えたという例を見たことがないのだ。年齢を重ねると、集中力、記憶力、体力、視力などが衰えるため、多くの場合、本人が期待するほど本を読むことは困難なのではないか。
 現在、40代後半の僕にとって、これから先の読書をどう考えたらよいのか。そんなことを最近考えているのである。

 山田風太郎の晩年の著作に『あと千回の晩飯』というエッセイがある。
 僕の場合、あと何回晩飯を食うことが出来るかはわからないが、どんなに長生きしたとしても、あと千回セックスすることは出来ないだろう。では、あと何冊本を読めるのか。いや、あと何冊本当に面白い本、自分の生き方に大きな影響を与えるような本に巡り合うことが出来るのか。
 僕は本を読むのが遅いほうだ。人生の後半、限られた時間の中で、どうしたら読書を充実させることが出来るのだろうか。
大層な書き出しになったが、以下は最近考えている僕なりの読書法7か条である。

1.今まで読んだ本の中で面白かったものを再読する
 「再読したい本」を数えてみると、そんなに多くはない。せいぜい数十冊程度だろうか。しかし、それらは全て確実に読み返したいと思っている。

2.途中まで読んでつまらなかったら止める
 最初の100ページを読んで魅力を感じなかったら、どうせ最後まで読んでも面白くない可能性が高いからだ。
 と思っていたのだが、最近、宮部みゆきの『スナーク狩り』を読んで、少し考えが変わった。100ページを過ぎたあたりから、俄然面白くなってきたのである。こういうケースは滅多にないのかもしれないが。

3.完読を目指さない
 最初から最後まで、順に読み通す必要があるのは長編小説だけではないだろうか。それ以外の本は面白そうな箇所だけ拾い読みでも構わない。著者の思想を全部理解しようなどと思わないことだ。また、再読の際は好きな箇所だけ読み返すのも良いだろう。

4.本に教養を求めない
 勉強のため、情報収集のための読書はしたくない。僕がこれからの読書に求めるのは、知的刺激と娯楽である。(辞典の類は例外だが、あれは読書の対象とは異なるものと捉えている。)

5.SFはもう読まない
 面白そうなやつはだいたい読んでしまったと思っている。かつて読んだものを再読することはあるだろうが、自分の中でSFは過去のものになっている気がする。

6.マンガは買わない
 場所を食うばかりである。あきらめも必要なのだ。

7.新刊は買わない
 話題につられて新しいものに手を出さないようにしたい。1年以上経っても書店に並んでいる本、そのときまで興味が持続している本を読みたいと思う。


あと千回の晩飯 (朝日文庫)

あと千回の晩飯 (朝日文庫)