Miles Davis / Tutu

 ワーナー・ブラザーズ移籍第1弾アルバム。この頃から1991年に没するまでは、マイルスの晩年期といってよいだろう。バンドを率いてアルバムを録音することはなくなり、ミュージシャンが作成したベーシック・トラック(ようするにカラオケ)に合わせて、マイルスはトランペット・ソロを吹くだけ、というやり方で、何枚かのアルバムを残している。
 全8曲入り。(5) のみジョージ・デュークがオケを制作。他の曲はマーカス・ミラーが同様の手法で製作している。リズム・マシンやシンセサイザーシーケンサーでプログラミング(自動演奏)して作り上げた、いわゆる「打ち込み」というものだが、当時ジャズの世界ではこういうのが目新しかったこともあって、高い評価を得た。
 演奏はたかがカラオケと侮ることなかれ。マーカス・ミラーのベーシック・トラックはレベルが高いし、マイルスのミュート・ソロも最高にかっこいいのだ。
 全体に当時流行りのデジタル・サウンドだが、あらためて (1) を聴いたら、スネア・ドラムの音(おそらくローランドのリズム・マシン)が物凄く複雑である。その代り、シンバルの音がしょぼいと思った。ただし、ジョージ・デュークが製作した (5) は平凡でつまらない。
 (6) はポップ・グループスクリッティ・ポリッティのカヴァー。ほぼ原曲のままのアレンジにマイルスがトランペットをかぶせているだけの曲だが、意外とかっこいい。ポップ・ソングのカヴァー演奏の中では一番好きかも。