The Wayne Shorter Quartet / Without A Net

Without a Net

Without a Net

  • 2010〜2011年録音。(2013年発売。)
  • Wayne Shorter (ts, ss), Danilo Perez (p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds), Valerie Coleman (fl), Toyin Spellman-Diaz (oboe), Mariam Adam (cl), Jeff Scott (hr), Monica Ellis (basson)
  • 前作より8年ぶり。2013年に発売されたウェイン・ショーターの(現時点での)最新作。Wayne Shorter Quartet 名義での第3弾ライヴ・アルバムである。(ジャケットの 'QUARTET' の文字が大きくなり、メンバーの名前も書かれているというのがポイントかもしれない。)そして、1970年以来43年ぶりの Bluenote レーベル復帰作でもある。
  • 全9曲入り。(6) のみ2010年12月8日録音で、The Imani Winds という5人編成の木管楽器アンサンブルとの共演。他の曲は詳細がクレジットされていないのだが、2011年のヨーロッパ・ツアーのライヴ音源を中心に構成されているらしい。
  • アマゾンのレビューで指摘されているとおり、前2作とくらべて録音バランスに違いがあり、ピアノの音が非常に大きく、ベースはややオフ気味になっている。レコーディング時のスタッフは同じ顔触れらしいのだが、どういう変化なのだろうか。
  • (1) はマイルス・デイヴィス時代のレパートリー。また、(4) は珍しくウェザー・リポート時代の曲を再演している。いずれも、ヘヴィーな即興音楽に作り替えられていて、物凄い迫力だ。
  • (6) は木管楽器アンサンブルを含む9人編成で、23分におよぶ超大作。力作なのだろうけれど、さすがにこれは長すぎる。録音状態も遠くに置いたマイクで音を拾っているような感じで、迫力に欠ける。("Alegira" のブラス・アレンジは演奏も録音もすごく良かったのに、これは残念。)
  • (7) はフレッド・アステア主演、1933年のミュージカル映画の主題歌。カヴァー曲だが、ほとんど原型をとどめないアレンジだ。なお、これ以降の曲はベースの音がかなり大きくミキシングされている。エンディングはかすかにフェイドアウト
  • (8) と (9) はカルテットの4人名義の作曲。ベースの変拍子のリフから始まる (8) がかっこいい。(9) のエンディングはテナーの音だけを残しつつフェイドアウト
  • ウェイン・ショーターは今年80歳。かつてのようなロング・トーンはさすがに少なくなったが、リズム隊に向かって切り込むような鋭いフレーズは健在である。しかも、老境というような枯れた音ではなく、昨今のジャズ・シーンをほとんど一人で牽引するかのような現在進行形のサウンドを、ショーターは創りつづけている。我々はあと何回、彼の創り出す音を聴くことができるのだろうか。