初音ミク/J.S.バッハ 『マタイ受難曲』

 ここ数日、リヒターの 『マタイ受難曲』 を聴いているのだが、気がついたら受難日(イエスが十字架に架けられた日)になっていた。リヒターのバッハは何度聴いても飽きない一生モノなのだが、今ここに新たな 『マタイ受難曲』 が生まれつつある。それが初音ミク・バージョンだ。
 なにしろ長大な曲である。レチタティーヴォ(台詞に相当する部分)、アリア(独唱)、コラール(合唱)あわせて68曲あって、全部演奏すると3時間くらいかかる。製作者の小川P さん*1は根気よく丹念にシンセサイザーの打ち込みを行い、パート1を公開したのが2008年1月。2年以上も前のことである。2010年3月に公開されたパート21は、53-54曲を収録しており、残りはあと10曲あまりとなった。



 最初、バッハをなめているのかと思ったら、大マジである。最後まで聴くと感動する。
 ドイツ語の歌詞と日本語の対訳がついているのがうれしい。また、別人による解説コメントがやたらと詳しくて、この場面には、この音にはこういう意味があったのか! と驚く。



 1:20 から始まるコラール 「血しおしたたる」 の作曲者はバッハではない。ハンス・レオ・ハスラーという作曲家が1601年に発表した合唱曲(元はラブソングだったらしい)で、バッハはこれを引用している。『マタイ受難曲』 にはこの旋律が何度も出てくるのだが、すべて歌詞が違っていて、演奏のニュアンスも大きく異なる。
 この後、いよいよ十字架の場面、最大のクライマックスに向かうのだが……。小川P さん、がんばってください。


 余談だが、「血しおしたたる」 の旋律は、ポール・サイモンの 「アメリカの歌」(1973年)の冒頭にも用いられている。

 これも名曲ですね。


バッハ:マタイ受難曲 BWV244

バッハ:マタイ受難曲 BWV244

*1:Bach を日本語に訳すと 「小川」 なんですよね。