猫の言葉と人の言葉 (4)
先月、足を手術した。退院のときは膝下まで包帯を巻き、2本の松葉杖をついた状態での帰宅だった。
金属製の松葉杖はガチャガチャと大きな音を立てる。家に帰ったら猫たちと遊びたいなあと思っていたのだけれど、ロボットみたいな杖の音に、彼らは怖がって寄りつこうとしなかった。
夜、久しぶりにシャワーを浴びてさっぱりしたものの、抜糸前に退院したものだから浴槽につかるのは厳禁である。包帯の上に厚手の靴下を履いても、足元はどうしても冷えてしまう。家の中って意外と寒いんだなあと思いながら、僕は布団に入った。
すると、猫たちがやってきたのである。ケイは枕元で喉をごろごろ鳴らしている。ミイは布団の上から、包帯の巻かれた患部に頭を乗せて横たわっている。彼らには、人間の体の痛むところ、温めるべきところがわかっているのである。
――もう言葉なんかいらない。僕はそのまま深い眠りに落ちていった。
(第一部 泥棒かささぎ編・完)
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