ブラームス 『ハンガリー舞曲』
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)は、1889年12月2日に自身のピアノ演奏を“録音”している。そのときの曲目は 「ハンガリー舞曲第1番」 だった。この歴史的な録音が YouTube にアップされているので聴いてみよう。
音質が悪過ぎて、何を弾いているのかさっぱりわからないレベルのものである。最初のほうで男性の声が聞こえるが、以下のような事情であるらしい。
ハンガリー舞曲は当初録音を恥ずかしがったブラームスがさっさと演奏を始めてしまい、立会人があわてて「1889年12月、(リヒャルト・)フェリンガー博士邸、ただいまの演奏はブラームス博士!ヨハネス・ブラームスのものだ」と叫んでいるのが冒頭にかぶっている。
上の“録音”はあまりにもわけがわからないので、ちゃんとした第1番を聴いてみたい。ピアノはエフゲニー・キーシンである。
「ハンガリー舞曲」 とは、ブラームスがハンガリーを訪れた際に聴いたロマ民族(ジプシー)の音楽を採譜し、ピアノ連弾用に編曲した作品である。ブラームス自身が作曲した部分も混ざっているらしいのだが、「編曲」 と銘打って出版されたため、作品番号がついていないという特徴がある。「ハンガリー舞曲集」 の楽譜(1〜10番)は1869年に出版され大ヒット。続編(11〜21番)が1880年に出版された。哀愁をおびたメロディと軽快なリズム、華やかな装飾音に彩られたこれらの楽曲は、当時のウィーンあたりで大流行したのだろう。1878年には同じ出版社からの要請で、ドヴォルザークが 「スラヴ舞曲集」 を作曲(こちらはオリジナル)、発表している。
つまり、「ハンガリー舞曲」 はポップスなのである。高尚な芸術音楽とは違った、庶民的で誰もが楽しめる音楽になっているのだ。
続いて、最も有名な 「ハンガリー舞曲第5番」 の映像。
映画 『チャップリンの独裁者』 より床屋の場面。軽快な音楽に合わせて、ひげを剃るパントマイムが見事。
こういう曲にはピアノよりヴァイオリンだよなあ、とつくづく思う。
- アーティスト: カラヤン(ヘルベルト・フォン),ドヴォルザーク,ブラームス,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2006/11/08
- メディア: CD
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