第13講 泉鏡花 『歌行燈』(2)

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講義ノート

 講義の最中にとったノートをほぼそのまま写したものなので、文責はすべて kanimaster にあります。

  • 『歌行燈』は市川雷蔵主演で映画化された。
    • 映画のストーリーは時間順に進行する。
    • 小説はフラッシュバック等を多用している。
  • 一 「熱田の紙のみそなわす、七里のわたし浪ゆたかにして、来往の渡船難なく桑名につきたる……」
    • 昔は熱田から桑名に船で渡った。(名古屋は通らなかった。)
  • 「停車場(ステイション)」
    • 昔はステンショとも言った。“駅”は馬を繋ぐところで、もっと昔からあった。
  • 「臘虎(らっこ)皮の鍔なし古帽子を、白い眉尖(まゆさき)深々と被って、鼠の羅紗の道行(みちゆき)着た、股引を太く白足袋の雪駄穿。」
    • 服装を細かく描くのが流行った。
  • 冒頭から意味のない会話が延々と続く。これは場の雰囲気を作る手法で、歌舞伎などによくみられる。
    • 歌舞伎ではチャリーンと鳴ったら声をかける。声をかけていいのは3階席からだけ。
  • 三 「門附(かどづけ)」
    • 浄瑠璃をやって金をもらう、乞食のようなもの。
  • 「串戯(じょうだん)だ、強請(ゆする)んじゃありません。こっちが客だよ、客なんですよ。」
    • 何が起っているのか、なかなかわからない。
  • 四 「そうさ、生(うまれ)は東だが、身上(しんしょう)は北山さね。」
    • 北山は「来た」にかけた駄洒落。
  • 五 「訳もない事に不機嫌な御亭(ごてい)が呼ばわる。」
    • 御亭は亭主のこと。 「ご亭どんがぐじゃっぺだるけん」(おてもやんの歌詞)「ぐじゃっぺ」は天然痘の痕という意味。
  • 「ああ、霜に響く。」
    • 序破急の序にあたる。だらだらした展開。
  • 六 「泊めてもらうから、支度はしません。」
    • おもしろくない冗談。
  • 十一 「私はね、……お仲間の按摩を一人殺しているんだ。」
    • ようやく話が始まる。
  • 十七 謡曲『海士(あま)』を舞う場面。
  • 二十 「この捻平を誰とかする、七十八歳の翁(おきな)、辺見秀之進。」/「いざや、小父者(おじご)は能役者、当流第一の老手、恩地源三郎、即是(すなわちこれ)。」
    • 二人の老人の名前がやっとわかる。
  • 二十一 「あわれや宗山(そうざん)。見る内に、額にたらたらと衝(つ)と汗を流し、死声(しにごえ)を振絞ると、頤(あご)から胸へ膏(あぶら)を絞った……」
    • 漫画のような勝負。
  • 「まだ一度(ひとたび)も声は聞かず、顔はもとより見た事もなけれども……当流の大師匠、恩地源三郎どの養子と聞く……同じ喜多八氏の外にはあるまい。さようでござろう、恩地」
  • 二十二 宗山の憤死。(ここでは自殺。)
  • 「向後一切(いっせつ)、謡を口にすること罷成(まかりな)らん。立処(たちどころ)に勘当だ。」
    • プロが素人を負かしてはならない。
  • 二十三 「「背(せな)を貸せ、宗山。」と言うとともに、恩地喜多八は疲れた状(さま)して、先刻(さっき)からその裾に、大きく何やら踞(うずく)まった、形のない、ものの影を、腰掛くるよう、取って引敷(ひっし)くがごとくにした。」
    • 宗山の幽霊が出てくる。
    • 映画では叔父源三郎が喜多八を許してやるところまで描かれるが、小説はここで終っている。

前期講義終了

 猫猫塾・文学コース前期講義は今回で終了です。僕は後期は受講しませんので、講義ノートも今回で終了となります。
 小谷野先生ならびに関係者の皆様、ありがとうございました。