モダンジャズ入門

  • 書店の新書売り場には、各出版社からモダンジャズ入門書のたぐいが並んでいる。
  • 手にとってみると、どれも似たような内容で、切り口はさまざまだけれど、同じような CD がオススメされている。似たり寄ったり、と書くと悪口に聞こえるかもしれないが、どれもそれなりの水準を満たしているのだと思う。
  • この手の本は10年経っても中身が変わらない。つまり、直近の10年間に「名盤」と呼べる CD が出ていないのである。
  • 一方、「定番」といわれるアルバムはある程度決まっているので、入門書のおすすめ通りに聴けば、それほど外れることはないだろう。(クラシックの場合は人によって好みが激しく分かれるので、外れの可能性はかなりある。)
  • 入門書がすすめる「定番」はオリジナル・アルバム至上主義である。何度も再発売されるオリジナルを重視するのは合理的ではあるのだが、ベスト盤、コンピレーションのたぐいは完全に無視されている。
  • ジャズを系統だてて聴くにはオリジナル盤が良いと思うのだけど、「居酒屋で流れているような元気の出るジャズが聴きたい」とか「大人の雰囲気のピアノ・トリオが聴きたい」といったリスナーは、アート・ブレイキービル・エヴァンスを何枚も買う必要はなくて、適当なタイトルのコンピレーション CD を選べば十分である。
  • 80年代頃には「セロニアス・モンク入門」みたいな感じのムック本がたくさん出ていたのだが、最近はああいう企画ものはあるのだろうか。
  • 『マイルスを聴け!!』 など「聴け!!」シリーズはマニア向け。一人のアーティストの録音をブートレグに至るまで網羅した本なので、初心者が読んでもさっぱりわからない。
  • 登山の世界には 『日本百名山』 という決定版の書籍があるが、ジャズにもそういう「これ1冊読めばOK」という本があればいいのに。