伊坂幸太郎 『重力ピエロ』

 さまざまな年代の回想場面が不連続に描かれ、いずれも意味不明のまま、あるいは中途半端なままストーリーが進行する。それらのエピソードは伏線として機能し、あとから回収される。これが 『重力ピエロ』 の基本構造だ。
 一体、伏線は回収されるためにのみ存在しているのだろうか? 伏線とは何だろう? 
 巧妙に張られた伏線が手掛かりとなって、事件解決に役立つとか、大団円に至るとか、そういったカタストロフィに欠ける小説だと感じた。試合の終わった後の原っぱで球拾いをしているような徒労感。ウィニング・ボールはしっかりグローブに受け止めたい、というのが一読者としての願いである。