三島由紀夫 『奔馬』

豊饒の海 第二巻 奔馬 (ほんば) (新潮文庫)

豊饒の海 第二巻 奔馬 (ほんば) (新潮文庫)

  • 『春の雪』よりも、ずっと面白い。
  • 主人公・飯沼勲は、『春の雪』の松枝清顕の生まれ変わり。最初から、相対化された存在として登場するわけで、彼のとんでもない思想、信条にも関わらず、感情移入することなく、ある意味安心して読み進めることができるのだけれど、実はそこのところが正に作者の仕掛けた巧妙な罠である。最後の方、裁判の場面あたりから徐々に、そして結末に至る頃にはいつの間にか勲を思いきり応援している僕自身を発見して、愕然とする。
  • 前作は清顕の病死で終わった。それから19年後、本作の本多繁邦は清顕の生と死を美化しすぎている。この状況は次作以降どうつながっていくのか。