Miles Davis / In Stockholm 1960 Complete

In Stockholm 1960 Complete

In Stockholm 1960 Complete

 1960年3〜4月、マイルス・デイヴィスクインテットはヨーロッパ・ツアーを行った。このツアーのライヴ盤は当時発表されず、貴重だ貴重だと騒がれながら、80年代以降次々とあちこちのマイナー・レーベルから発売されて、いつの間にかかなりの枚数が出ているようである。すでにジョン・コルトレーンの退団が決まっていたといわれ、実際にマイルスとコルトレーンの最後の共演となったわけだから、一応聴いてみる価値はあるだろう。
 本アルバムは、既出の音源を組み合わせてスウェーデンの Dragon というレーベルから2002年に発売された4枚組 CD。
 全23曲(23トラック)入りで、(1)〜(7) がコルトレーンを含む3月の録音。(ただし、(4) はコルトレーンのインタビュー。)(8)〜(23) はソニー・スティットが一時的に加入した10月のツアーの録音で、(12), (13), (19)〜(21) はマイルス不参加、ソニー・スティットのカルテット演奏またはウィントン・ケリーのピアノ・トリオ演奏である。
 3月、10月ともにモノラル録音で、音質は A クラス。ブートレッグとしては悪くない部類だと思う。ただし、(6) と (23) のみ音質が極端に悪く、バリバリといううるさいノイズが入っている。
 さて、演奏内容だが、3月録音のほうはとにかくコルトレーンがぶっちぎっている。どの曲もソロの始めのほうはおとなしいのだが、途中から何かに取りつかれたかのように激しい演奏になって行くのだ。マイルスのソロがまったく印象に残らないくらい、コルトレーンが強烈なのである。グループの演奏としてはまったくダメだと思うが、これはこれで面白いのではないか。
 一方、10月録音は全体に平凡でつまらない。ソニー・スティットはこのグループに合わないとしか思えないし、マイルスもノッていない。あと、ウィントン・ケリーが在籍していた頃の "Round Midnight" はバックのアレンジがダサいと思う。