Herbie Hancock / Imagine Project

Imagine Project

Imagine Project

  • 2010年録音。
  • Herbie Hancock (p, key), Larry Godlings, Kofi Burbridge (Hammond organ), Wayne Shorter (ss), Anoushka Shankar (sitar), Jeff Beck, Derek Trucks (g), Marcus Miller, Tal Wilkenfeld, Larry Klein (el-b), Vinnie Colaiuta, Manu Katché (ds), Alex Acuña (perc), P!nk, Seal, India.Arie, Oumou Sangaré, John Legend, Céu, Susan Tedeschi, Lisa Hannigan, Juanes, K'naan, Los Lobos, Dave Matthews, James Morrison, K. S. Chithra, Chaka Khan (vo), etc.
  • 1曲ごとに歌い手とミュージシャンが変わるオムニバス形式のヴォーカル・アルバム。"Possibilities" (2005年)の続編的な内容だが、「昔の名曲を本人が歌う」コーナーがなくなったのと、非英語圏の歌が半分近くに増えてワールドワイドな感じになっている点が異なる。
  • 全10曲入り。ジョン・レノンの「イマジン」から始まり、ピーター・ガブリエルボブ・ディランボブ・マーリー等、有名なポップ・クラシック、あまり有名でない曲、オリジナルの(たぶん)新曲まで、幅広い選曲になっている。ハービー自身が作曲した曲は含まれておらず、彼はほとんどピアノ演奏に専念しているようだ。
  • 全体に無名曲、新曲ほど聴きごたえがあり、有名曲ほど平凡でつまらない。
  • (1) "Imagine" は2つのパートから構成されていて、最初の1コーラス(冒頭2分間)とそのあとの部分で、歌手も演奏者も変わる。ところで、昨今、猫も杓子も「イマジン」をカヴァーしているような気がするのだが、この曲そんなに良いだろうか? この歌はジョン・レノンが歌うから味があるのではないのか? (かつてビートルズの「イエスタデイ」がやたらとカヴァーされていたときも同じことを感じたのだ。)本ヴァージョンも例にもれず、ゴージャスなメンバーを集めた割に平凡な出来である。ジェフ・ベックがギターを弾いているのだが、彼は何をしにきたのかわかっていないのではないか。
  • (3) はバーデン・パウエル作曲のブラジリアン・ポップ。シンプルなアレンジで複雑な曲を演奏していて素晴らしい。ヴォーカルの Céu の歌声も素敵。(ギタリストの名前がクレジットされていない!)
  • (7) は2曲メドレーのようになっていて、2曲目(というかサビ)がボブ・マーリーの "Exodus" である。ハービーのエレピのソロは短いのだが、しびれるほどかっこいい。
  • (8) はザ・ビートルズのカヴァー。この曲は誰がカヴァーしても同じになってしまう。しかも原曲にかなわない。
  • (10) はアヌーシュカ・シャンカール(ノラ・ジョーンズの異母妹)のシタールウェイン・ショーターのソプラノ・サックスをフィーチャーした新曲。(9) までのポップ路線とは一線を画すインド風フュージョン(コード進行はブルース!)である。作曲は本アルバムの共同プロデューサーであるラリー・クレイン。ムンバイ(インド)とロサンゼルスのスタジオで録音されたと書かれているが、実に気合の入った音楽だ。K. S. Chithra とチャカ・カーンのヴォーカルも素晴らしい。これ1曲のために CD を買う価値があるのではないだろうか。
  • ハービー・ハンコックは本アルバム当時70歳。ミュージシャンとしてのピークはすでに過ぎているはずだ。彼は1980年代初めにクインシー・ジョーンズの影響を受けて、多数の人気ミュージシャンを集め、クインシーまがいのアルバムを作ったことがあった(あれは失敗作だったが)。しかし、それから30年。気がついたら、とっくにクインシーを超えるプロデューサーに成長していたのである。