連句に挑戦してみた

 ここ半年くらい、ネットで知り合った人たちと文通を行っている。便箋に手書きで書いて、郵便でやりとりしているのである。何でもかんでもメールや SNS などのやりとりで済ませてしまうこの時代に、なんとも悠長なことを始めたものだと思うのだが、やってみると意外と面白いのだ。
 その文通仲間の一人と「連句」を始めたのである。
 昨年11月下旬、僕が手紙の終わりに一句書き留めて投函したところ、友人からの返信に返句が書かれていて、連句をやってみたいと提案されたのが始まりであった。以来、半年かけて手紙は5往復し、以下に掲げる10句を生み出した。

寒月や少し窓開け風呂入る      可児


湯気のぼる坊主頭の師走かな    膝山


あたまを照らす淡き月影        可児


白雪つもる濃紺の夜          膝山


月隠れ絣の紺や春の宵        可児


紺屋の庭で揺れる白梅         膝山


隣家に咲きし椿の落ちにけり      可児


雪解けの一路越え歩き行く       膝山


この路を登り詰めれば山桜      可児


見ごろ過ぎふみふみ歩く二人づれ   膝山

 もとより伝統的な連句のルールを逸脱しているのは言うまでもない。例えば、五七五の次は五七五七七と付ける、といった形式すら守られていない。だが、我々の間で暗黙のうちに出来上がってきたルールよようなものがあって、

  • 前の句から一字もらう。または前の句からの連想で詠む。
  • 二つ前の句は顧みない。そうすることによって、連句は前へ進むことになる。
  • ときどき季語を入れる。*1

……といった具合になっている。
 あとから考えると、季語を入れたのは正解だったのかもしれない。それぞれの季節を詠みこむことによって、我々の半年間の歩みを振り返ることが出来るように思うからである。

膝山さんについて

 連句の相方、膝山(しつざん)さんは、鳥取県在住の織物職人。お仕事の Facebookページは以下のとおり。
鳥取弓浜 中村括り(なかむらくくり)
 連句の中に、「絣の紺」、「紺屋」といった言葉が出てくるのは、膝山さんの職業に因んでいる。
 もっとも、膝山という俳号は我々が文通を交わしている間に、彼が決めたものなので、ネットでこの名前を公開するのはおそらく初めてだろうと思う。


 僕は文通の途中で、「十句出来たら、ブログで公開しよう」と提案した。
 しかし、我々の文通はまだまだ続く。次からは第2ラウンド。僕が詠む番である。膝山さん、しばらくお待ちください。

*1:伝統的な連句では発句以外、季語を入れなくてもよい決まりになっているはず。