スーク・トリオ

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番&第2番

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番&第2番


Suk Trio - Wikipedia
 スーク・トリオはチェコ室内楽団である。1951年に結成され、メンバーチェンジを繰り返しながら1990年まで活動したが、1980年代に上のベートーヴェンを録音したときは以下のメンバーだった。

  • ヨーゼフ・スーク(Josef Suk, violin)
  • ヨーゼフ・ハーラ(Josef Hala, piano)
  • ヨーゼフ・フッフロ(Josef Chuchro, cello)

 メンバー全員ヨーゼフである。Wikipedia によると、さらにややこしいのは 「スーク・トリオ」 という名前の由来となったヨーゼフ・スーク(1874-1935) は トリオのリーダーであるヨーゼフ・スーク(1929-)とは別人なのだ。19世紀生まれのヨーゼフ・スーク(ヨセフ・スク表記もある)は有名なチェコのヴァイオリニスト兼作曲家だそうだから、スーク・トリオという名称はアマデウス四重奏団とかスメタナ四重奏団とかそういうたぐいの呼び名なのだろう。大ヨーゼフはドヴォルザークの娘と結婚した。この二人の孫がヨーゼフ・リーダーなのである。大ヨーゼフの存在がなかったとしたら、リーダーはドヴォルザーク4世などと名乗っていたかもしれない。
 この記事はすべて余談なので、さらに余談を書いてしまうが、同じグループに3人もヨーゼフがいたら、ややこしいことになるのではないかと気になるのである。
「ヨーゼフ、電話よ。女のひとから」
「ヨーゼフさん、サインください」
 このような台詞は禁句である。さもないと必ず揉め事に発展する。
 それから、ヨーゼフ同士はどう呼び合っているのか。姓を呼び合うのだろうか。「ハーラ」「スーク」 はなんとなく空腹な感じがするけれども、「おはようフッフロ!」 はちょっとかわいいかもしれない。一方「ヨーゼフ・H」、「ヨーゼフ・C」にすると途端に不条理なカフカ的展開になる。ヨーゼフという名前はチェコ界隈には多いのかもしれないが、このメンバー編成になったとき、ヨーゼフ・S は 「失敗したかも」 と一瞬くらいは思ったのではないかと想像する。


 ついでにもう一つ余談。
 チェコという国は音楽の世界では比較的マイナーな存在だが、実はジョージ・ムラーツミロスラフ・ヴィトウスといった優秀なジャズ・ベーシストを輩出している。特にミロスラフ・ヴィトウスは類稀なる美貌と超絶技巧の持ち主として有名なミュージシャンだ。彼は優れた才能に恵まれていたが、政情不安な当時のチェコでは演奏活動など出来なかった。そこで彼は20歳のときに祖国を捨て、アメリカへ渡ったのである。若きミロスラフは、チック・コリアらと共演して一躍スター・プレイヤーとなった。そして3年後、ミロスラフは世界一有名なエレクトリック・ジャズ・バンド結成時に声をかけられ参加する。バンドのリーダーは皆からジョーと呼ばれているオーストリア出身の男で、ミロスラフより15歳も年上だった。リーダーのプロフィールを読むと、本名 Josef Zawinul と書かれている。その時、ミロスラフは思わずつぶやいた。
「またヨーゼフか!」


 ※ほとんどフィクションです。


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