Miles Davis / Cookin' With The Miles Davis Quintet

COOKIN-RUDY VAN GELDER RE

COOKIN-RUDY VAN GELDER RE

 1956年に行われた 《マラソン・セッション》 の中の1枚。アルバム4枚のうち一番最初、57年に発売されたが、すべて10月26日(2回目)のセッションから収録されている。
 全4曲入り。ただし、(4) は2つの曲が連続して演奏されているので、合計5曲収録されている。(2) と (4) の前半はマイルス作曲のオリジナル。ほかはスタンダード・ナンバー。
 (1) "My Funny Valentine" はスロー・バラードの名曲。演奏も 《マラソン・セッション》 の中で最高だと思う。マイルスのミュート・トランペットも良いし、レッド・ガーランドのピアノも素晴らしい。そして、ポール・チェンバースのベースがよく絡んで、演奏を動きのあるものにしているのだ。(コルトレーンは不参加。)
 (2) はピアノがテーマを弾くブルース曲。ジャム・セッション風のリラックスした演奏が楽しい。(3) はソニー・ロリンズ作曲のレパートリー(原曲は "Bag's Groove" 収録)の再演で、テーマ部分のアレンジが新しくなっているものの、出来は今ひとつ。(4) はアップ・テンポの前半(エンジン全開!)が終わってから、ミディアム・テンポの後半が突然始まる部分が楽しいのだが、そこから先が7分もあって長く感じる。アルバム全体としては、緊張感のある (1) を除いて、消化試合のレベルだと思う。

Miles Davis / Miles Ahead

Miles Ahead

Miles Ahead

  • 1957年5月6〜27日録音。
  • Miles Davis (flh), Bernie Glow, Ernie Royal, Louis Mucci, Taft Jordan, John Carisi (tp), Frank Rehak, Jimmy Cleveland, Joe Bennett (tb), Tom Mitchell (b-tb), Willie Ruff, Tony Miranda (fhr), Bill Barber (tuba), Lee Konitz (as), Danny Bank (b-cl), Romeo Penque, Sid Cooper (fl, cl), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds), Gil Evans (arr., cond.)

 マイルスと編曲者ギル・エヴァンスのコラボレーション第1作。ギルを含め19人編成のオーケストラとの共演作品である。
 全10曲入り。(5) はマイルスとギルの共作*1、(6) はギル作曲のオリジナル。ほかはスタンダード・ナンバーである。すべての曲で、マイルスはやわらかい音の出るフリューゲルホルンを吹いている。
 本アルバムはジャケットの違うもの、ステレオとモノラル、編集が異なるもの、丸ごと1枚分の別テイクを収録したものなど、さまざまなヴァージョンが出ていてややこしい。僕が持っている CD はジャケットが女性のやつで、ステレオで、ほとんどの曲がクロスフェイドでつながっているように編集されているヴァージョンである。ただ、マスタリングが古いらしく、音がモワーンと響くので、(最近出ている CD を試聴したら、もっと音がクリアな感じになっていた。)そのうち買い換えるかもしれない。
 ギルとのコラボレーション作品の中では、比較的明るい雰囲気で、繰り返し聴きたくなるアルバムである。無人島に持っていくならこの1枚!だと思う。

*1:"Miles Ahead" というタイトルの曲はアルバム "Blue Haze" にも収録されているが、別の曲。

Miles Davis / Ascenseur Pour L'Échafaud

死刑台のエレベーター

死刑台のエレベーター

  • 1957年12月4〜5日録音。
  • Miles Davis (tp), Barney Wilen (ts), René Urtreger (p), Pierre Michelot (b), Kenny Clarke (ds)

 フランスの映画監督ルイ・マルの映画『死刑台のエレベーター』(1958年公開)のサウンドトラック盤。Fontana というマイナー・レーベルから発売された。公演のためパリを訪れていたマイルスが、現地のミュージシャンとともに録音した作品である。バンドは、映画の未編集フィルムを流しながら、ほぼ即興で演奏を行ったといわれている。
 オリジナル LP は全10曲入り27分。CD 化の際に、リヴァーブのかけられていないヴァージョン、別テイクなど16曲が追加され、全26曲74分の「完全版」として再発売されている。*1
 曲はいくつかのパターンの組み合わせになっていて、即興演奏ながらきわめて高い完成度と緊張感を保っている。マイルスのトランペットは完璧だし、パリに移住していたケニー・クラークのブラシも最高だと思う。
 リヴァーブなどのエフェクトもかっこよく仕上がっていて、この音楽がなければ映画は失敗に終わっただろう。(サスペンス映画なのに、ストーリーはそれほど面白くないのだ。)
 CD のジャケットは数種類存在するようだが、中身は同じはずである。あとから追加された16曲は同じパターンの繰り返しなので、鑑賞するときは飛ばしても差し支えない。

*1:オリジナル LP に収録されていた10曲は (17)〜(26)。(1)〜(16) が追加曲。