俳句

どくだみ

どくだみの花のかたちに痛みけり

小満

小満や傘のマークの並ぶ地図

夏めく

夏めくや恋と言はれていたやうな

愛鳥日

眈々と影忍び寄る愛鳥日

卯波

橋桁に音のみ残る卯波かな

五月

準急の少し空いたる五月かな

小町忌

小町忌や夫(つま)の年収一千万 似ていると言いたいけれどまむし草

春の月(続)

手を繋ぐための口実春満月

春の月

春月や横一列に並ぶ子等

春うらら

縞パンのやゝ透けてをり春うらゝ 病室の窓に零るゝ桜かな

四月

パンプスの光る四月の朝(あした)かな 釣銭を幾度数ふる四月かな

彼岸過

商店の値を付替へて彼岸過 キッチンに最初に飾るスイートピー

蛙の目借時

酒はいざ楽しく飲まむ目借時

亀鳴く

亀鳴くや視線の先に男ふたり

卒業歌

体制の犬と謗られ卒業歌

余寒

割箸の上手に割れぬ余寒かな

暮遅し

コロッケの揚がる匂ひや暮遅し

二月尽

百人もともだち出来ず二月尽

山々の眠り起して雉の声 雉鳴くやお山にぽんと残る月

春の暮

教会の鐘の音近し春の暮 春宵(しゆんせう)に帝都を襲うバランかな

猟名残

マンモスの骨つき肉も猟名残

春の雪

公演は延期となりて春の雪

春浅し

春浅し訴状は未だ届かざる 水菜のみ除けたる箸の器用さよ

春隣

待春やミニスカートの尻抑ふ 坂道を駆け来る子等や春隣 冬霧に三日の月の隠れけり

寒梅

単語帳捲つて歩め寒紅梅 今朝咲きし寒紅梅も五つ六つ 寒梅の匂ひに谷中から根津へ 寒梅や谷中墓地から千駄木へ

円谷英二命日

円谷忌味噌を溶かしてきのこ雲

隼に育てられたと云う子供

大寒

大寒やアンパンマンのほうれい線

粕汁

粕汁に具はごろごろと投ずべし 粕汁を喰ひし女子の高鼾 粕汁や兄も今年は仮出所

寒月

寒月や昔河童のおった話