俳句

暮の秋

槌の音の近く響くや暮の秋

虚栗(みなしぐり)

魂はあるやも知れず虚栗*1 終バスのランプの赤し秋時雨 *1:みなしぐり。殻ばかりで実のない栗。

紅葉且つ散る

夜寒ありて祈るべしただ祈るべし 紅葉且つ散る星々の重力忌 重力の使命 (ハヤカワ文庫 SF (602))作者: ハル・クレメント,浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1985/03メディア: 文庫 クリック: 11回この商品を含むブログ (7件) を見る

朝寒ほか

秋寒や猫の入りたるダンボール 朝寒に言葉の数も減りにけり 秋深し子等の集ひし聖礼典 聖餐に集ひし子らや秋深し

霜降

懐に猫入込んで九月尽 霜降やお湯の沸くまで待つ時間 秋寒や猫のかたちの窓硝子

吊し柿

空の青のますます青く吊し柿

秋時雨

ハイドンも退屈なのよ秋時雨

小鳥来る

小鳥来る第二楽章アンダンテ 秋寒し双子の風呂の時間待ち

老蝶ほか

緩解の便りを受くや野紺菊 老蝶やガロといふ名の喫茶店 足元に陰の大きく豆名月 青虫の食みし分のみ進みけり

夜長

残尿感みたいなものもある夜長 長き夜や面と向かつてブスと言ふ

白菊

白菊や愛はとつくに消えました

障子干す

猫共が戰の跡や障子干す

曼珠沙華

本堂に拝む人あり今朝の秋 本堂の読経も終り曼珠沙華 教会に集ふ黒衣や杜鵑草

秋涼し

秋涼し挨拶かはす猫と猫

初風

初風にゆつくり妊婦歩みけり

今朝の秋

湖畔より絵葉書来る今朝の秋

立秋

立秋の月の膨らむ西の空

原爆忌

雨はやゝ白く降りつゝ原爆忌

ゾンビ

夏の夜に血反吐も青きゾンビかな

酷暑

コンクリの中に沁入る酷暑かな

船料理

御奉行も与力も座して船料理

夕立

親指の皮の剥けゐし夕立かな

戻り梅雨

江ノ島のやゝ遠くなる戻り梅雨

あんみつ

あんみつのときだけ正座する子らよ

夏椿

夜はきつと違つた貌(かほ)で夏つばき 夏つばき汝(なれ)と吾との間には

子蟷螂

子かまきり風に吹かれて消えにけり

桑の実

桑の実やよく喋るのは女の子

五月晴

水道の水さへ光る五月晴

百合

面食ひを黙らせをるや百合の花

五月雨

五月雨や兄は一人で応援す