カレー屋のテラス賑ふ青簾 アオザイの影の動いて竹簾 青簾ホーチミンから来た女

リモコンの力尽きたる小暑かな 弾き語るギターの弦の切れて夏

金色（こんじき）の胸を開いて鮎の宿 夏の日や恋するひとのありてこそ 夏服を選ぶをとめの恋路かな 短冊に名を綴りけり片想ひ

握る手の甲にえくぼや青楓

雨乞や毎年誰か消えて行く 雨乞の集いは雨天中止です 雨乞にいつも呼ばれる雨男

青葉闇京の女に逢ひに行く 木下闇まで延びてゐる運河かな 梔子（くちなし）の香に誘はれて生地獄 残像を踏む音軽し竹落葉 をんなの名を名付けられたる蜥蜴かな 山百合に弾くウクレレのコードかな

警官に囲まれてをりナボコフ忌 花柄のハンカチ拾ふナボコフ忌 遠くから見守つてゐるナボコフ忌

目に泪喉の奥までバナナ喰ふ 拳銃とバナナいずれか選ぶべし ティーガーの装甲厚しバナナ喰ふ 照準をバナナに定め距離弐百 演習の九〇式やバナナ積む 砲塔にバナナを積んで帰還せよ 病床に黒くなりゆくバナナかな

全国の女子高生よ夏ですよ ぐい呑を漂白しつゝ半夏生 発音で少し揉めたるバナナかな 七月や下五のインク滲みつゝ 半夏生ハンゲ一番ショウ二番