八月の三十二日に会へる人

シュウマイに醤油刺したる瓢（ふくべ）かな 泣き顔を描かれてをりぬ青瓢

自転車で浮塵子（うんか）の群に突入す

ホップ摘む食欲不振胃のもたれ

猫たちの玩具となりし秋団扇 秋扇欠伸をそつと隠しけり 秋団扇そんな告白されてもな

おはやうと挨拶交す爽やかさ 秋爽や前歯の白き十二歳 爽やかに路上駐車を通報す 秋爽や無断添削お断り 爽やかやほっぺに四つ×印 秋さやか砂糖は入れぬ方が好き ストローの中を通つて爽かなり

トラックにパラソル積んで秋の浜 黒髪に染め戻さうか秋の浜 手も繋がぬうちに秋の浜

自転車で巡査立ち寄る虫の秋 灯り消してテレビも消して虫の闇 虫すだく道を通つてコンビニへ 封筒を舐めて封する虫の秋 虫の秋隣の猫にこんばんは スイスから絵葉書届く虫の秋 お通しをつついてばかり虫の秋 明日嫁ぐ姉の鼾や虫の秋 虫の夜や次郎は今日も帰…

星さへも逢ふといふのにお前らは

無伴奏組曲五番秋の夜 一日中処暑に追ひかけられてゐる 着ぐるみのファスナー開かず脱げず処暑

対策は亀に任せよ薮枯らし

大磯に木陰求めて藤村忌

新品の眼鏡かければ星月夜 不時着のサハラ砂漠や星月夜

指先の髪柔らかき初秋かな 秋暑し猫を退かして寝る夕べ

猫じやらし猫はとつくに飽きてゐる

堀本裕樹公式ブログ |◆第２２回いるか句会告知 8月18日（土）、第22回いるか句会に参加。以下の6句を投句しました。 向日葵を見上げて見下ろされにけり ひまわりやすべてのひとにこんにちは 夜の秋や鏡の中に鬼がゐる 夜の秋真犯人まで十ページ 歓声のゴール…

放屁虫兄が部屋から出て来ない 秋の夜やクラリネットの五重奏

新涼やキムチ挟んで語りをり 盂蘭盆会キムチ携え来る子かな

秋海棠荷風先生金数ふ 秋海棠弓道部員の通り過ぐ

墓誌に知る人の名増えし墓参かな

玉音をネットで聴くや終戦日

少年の籠いつぱいの飛蝗かな

爪先をかつんと鳴らし阿波踊り まだまだまだ腰を落とせよ阿波踊り 幼子も見やう見まねで阿波踊り 手甲の先に花咲く阿波踊り 姐さんの男踊りの艶姿

赤蜻蛉の群れは峠の向ふから 陸橋の下を潜るや赤蜻蛉 赤蜻蛉案外空は平らなり 赤とんぼプレパラートに屈みけり

撫子や風に倒るることもなし 撫子や河原につよく立ちぬべし

鬼灯を鳴らす媼の入歯かな 鬼灯や少し未来を透かしつつ 鬼灯の路地に響くや下駄の音 鬼灯の殻の中にぞ生まれける

長崎忌柱に白きマリア像

鯊釣りや二年連続妻の勝ち

秋立つや雲の形のうつすらと

尾根歩き山の名前を一つずつ 三日後に発見されし登山帽 「こんにちは」百回続く登山道