蟇死ぬな生きろと云われても 時鳥しばし黙せよ我寝るに 港北の小暑のラブホ満室や

冷凍のアップルパイを買ふ小暑 焼きたてのアップルパイにアイス乗せ ご近所の莫迦も大好きアップルパイ 本日の注射の褒美アップルパイ アップルをパイにした奴大天才

サンダルを一番遠くに蹴れば勝ち サンダルや漁港の如く並びをり 夏草の中に落ちたるサンダルや

梅雨空や今日は何処迄逃げやうか 梅雨空の真下に『ドグラ・マグラ』読む 梅雨空やボリューム上げて聴くロック

花南瓜覗いてごらん猫がいる

姿見に簾の映る朝のうち 足裏の上を向ひたる青簾 折り紙の蝶舞ひ散らす青簾 尾の長き影動くなり青簾 若君に後ろ突かれし青簾 住職は清浄なりや青簾

月並と嗤はば嗤へ梅雨の月

空瓶のくるくる廻る半夏生 籐椅子に身を沈めをり夏の月

辣韮の茎を辣韮で束ねたる 沖縄の訛り判らず島辣韮

七月や一秒多く眠りをり