リック・ウェイクマン/ヘンリー八世の六人の妻

  • キーボード奏者、リック・ウェイクマン(1949-)は実に多作なひとである。1960年代終わりにセッション・ミュージシャンとして登場。71年にイエスに加入するまでに、数十枚のレコーディングに参加したのだという。
  • 多数の鍵盤楽器に囲まれるようにして演奏するスタイル=マルチ・キーボードというのは彼が始めたのである。当時はそういうのがかっこよかったわけで、僕もあこがれたものだ。
  • ウェイクマンを紹介するときに、「クラシックの音楽教育を受けた」という言葉がしばしば用いられていた。今では音大出身のミュージシャンなんて普通にいるのだが、当時のロック・ミュージシャンにしては珍しい経歴だったのである。
  • エスに関しては、以後2004年までの間に5回も加入と脱退を繰り返している。元々メンバーの出入りの多いバンドではあるが、いくらなんでもやりすぎである。
  • ソロおよび共作名義のアルバムを現在までに50枚くらい発表しているらしい。わけがわからない。
  • 以下、初期のウェイクマンの演奏をいくつか紹介する。

  • 1970年前後にストローブスというフォーク・グループに参加していた頃の演奏。他の3人があまりにも下手くそなので驚く。ほとんど学園祭のノリである。


  • デヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」(1969年)。1分過ぎあたりから、後ろのほうで静かに鳴っているのがメロトロンという楽器。マシン・トラブルが多く、やっかいな楽器だったそうだが、非常にあたたかな音が出るので大好きだ。


  • 同じくデヴィッド・ボウイの「チェンジズ」(1971年)。チェチェチェチェ……のところが脳内をグルグルしてしまうので要注意!
  • この曲を含むアルバム "Hunky Dory" は、ギターよりもピアノのほうが目立っている珍盤である。ウェイクマンはイエスやソロのときのような手クセがなくて、職人仕事に徹している。


  • イギリスのシンガー・ソングライター、キャット・スティーヴンスの「雨にぬれた朝」(1971年)。ウェイクマンのピアノが印象的な佳曲で、全米で大ヒットした。
  • ちなみに、この曲は讃美歌が原曲で新しく歌詞をつけたもの。ところが、キャットは後にイスラム教に改宗している。


  • 1973年に発表された全曲インストゥルメンタルのアルバム 『ヘンリー八世の六人の妻』より、「クレーヴのアン」。ドラムはイエスに加入したばかりのアラン・ホワイト。ジャム・セッション風の曲だが、アランのベスト・パフォーマンスの一つに挙げたい名演奏である。

Six Wives of Henry VIII

Six Wives of Henry VIII