マゼール/ホルスト 組曲 『惑星』

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 冨田勲シンセサイザーも良いんですけど、『惑星』 はなんといってもオーケストラの原曲が素晴らしいんですよ。hrkt0115311 さんにはぜひ管弦楽版を聴いていただきたいと思います。
 以下は 『惑星』 に関するトリビアなど。2005年に書いた記事を全面改稿したものです。


 イギリスの作曲家、グスターヴ・ホルスト(1874-1934)は、1917年に、組曲 『惑星』 を作曲・完成させた。
 この楽曲の特徴を挙げてみよう。

  1. 火星・金星・水星・木星土星天王星海王星の7曲から構成される管弦楽組曲である。
    • 当時、冥王星はまだ発見されていなかった。(冥王星発見は1930年。)
  2. オーケストラでは最大の4管編成である。
    • 4管編成とは、金管楽器を4人ずつ配置することをいう。それにバランスを合わせて、弦楽器奏者などの人数も増やす必要があり、総勢100人以上の演奏者が必要となる。
    • 『惑星』 の場合、金管楽器の編成はトランペット4、トロンボーン3、ホルン6、チューバ2。
  3. パイプオルガンが使用されている。
    • パイプオルガンが設置されているコンサート・ホールは少なくないが、どこでも演奏できるわけではない。
  4. 女声6部合唱が、最終曲「海王星」で使用されている。
    • わずか8分程度の最終曲だけのために、合唱団を雇わなければならない。
  5. ホルスト自身の意志および遺言により、編曲・楽器編成の変更・一部を抜粋した演奏が禁止された。
    • この点については、現在、著作権が切れており、解禁されている。(リンク参照。)
    • 冨田勲シンセサイザー版は、この問題をクリアしないまま発表された。このため、1977年当時は日本とアメリカのみレコード発売された。
  6. 以上のような事情があって、作曲者の死後、演奏される機会は稀となった。

 レコード芸術の分野では、ほとんど無名だったこの管弦楽曲を一躍有名にしたのは、カラヤンであった。(1961年録音。ウィーン・フィル。)カラヤンの後、多くの指揮者によって演奏されるようになり、『惑星』 はクラシック音楽の定番曲になったのである。
 以下に紹介する、1981年デジタル録音のマゼール盤は、空前の迫力でカラヤンの旧演奏を凌いでいる。 演奏、録音共に最高の一枚。
 岩崎一彰描く宇宙細密画のジャケットも魅力的だと思う。(CDはイラストが小さくて残念。)

ホルスト:「惑星」他

ホルスト:「惑星」他

 さらに後日談。
 2000年に、イギリスの作曲家コリン・マシューズが、「冥王星〜再生をもたらす者」を作曲し、ホルスト組曲の後に続けて演奏されることが多くなった。「冥王星」 つきの 『惑星』 CD はいろいろ出ているようだが、「金星」 の消え行くような静かなエンディングの後に、余計なものを付け加えたとしか思えない。また、2005年には 「小惑星トータティス」、「セレス」 など関連曲が複数の作曲家によって作られているが、これらはイギリス人指揮者サイモン・ラトルが企画したものらしい。
 その後、2006年に天文学上の 《惑星》 の定義が変更され、冥王星が惑星から除外されたりしたため、これらの曲の位置づけは微妙になってしまったのだが、まだまだ便乗曲が増えるかもしれない。