ブーレーズ/ストラヴィンスキー 『春の祭典』

 ストラヴィンスキー作曲 バレエ音楽春の祭典』 は、1913年、パリのシャンゼリゼ劇場でロシア・バレエ団によって初演された。指揮はピエール・モントゥー、振付はヴァーツラフ・ニジンスキーが行った。

初演にはサン=サーンスドビュッシーラヴェルなどの錚々たる顔ぶれが揃っていた。曲が始まると、嘲笑の声が上がり始めた。そして始まったダンサーたちの踊りは、腰を曲げ、首をかしげたまま回ったり飛び上がるという、従来のバレエにはない振付であった。野次がひどくなるにつれ、賛成派と反対派の観客達がお互いを罵り合い、殴り合りあい野次や足踏みなどで音楽がほとんど聞こえなくなり、ついには、ニジンスキー自らが舞台袖から拍子を数えてダンサーたちに合図しなければならないほどであった。ディアギレフは照明の点滅を指示し、指揮していたモントゥーが観客に対して「とにかく最後まで聴いて下さい」と叫んだ程だった。ストラヴィンスキーは自伝の中で「不愉快極まる示威は次第に高くなり、やがて恐るべき喧騒に発展した」と回顧している。


 春の祭典 - Wikipedia

 あまりにも前衛的な音楽と舞踏のため、客席がパニック状態になった、というエピソードである。この逸話をそのまま再現した BBC の映像化作品があるので、それを見てみよう。

 幸い、翌年に演奏会形式で再演されたときは大好評だったそうである。


 次は1978年制作の映像。演奏はピエール・ブーレーズ指揮、クリーヴランド管弦楽団

 いきなり女性ダンサーが自分のスカートをまくり上げてパンツ丸出しになる。3:40 からの群舞はスリラーみたいな感じだ。これでは音楽に集中できないし、ダンスも全体としては単調でつまらない。


 続いて、2002年制作の映像。演奏はブーレーズ指揮、パリ管弦楽団

 ダンサーは全員男性。EXILE みたいな感じの踊りである。円形のステージの周囲を、本物の馬が走りまわっている。それはともかく、音楽がかっこいい。


ストラヴィンスキー:春の祭典/ペトルーシュカ

ストラヴィンスキー:春の祭典/ペトルーシュカ

 ストラヴィンスキー作品はブーレーズの十八番で、彼は 『春の祭典』 を何度もレコーディングしているが、これは2回目の録音(1969年)で、一番良いと思う。(オケはクリーヴランド管弦楽団。)超複雑な曲なのだけど、ブーレーズは演奏者一人ひとりにスポットライトを浴びせる。大音響の中にあっても、ちゃんとピッコロやファゴットのフレーズが聞き分けられるのである。アナログ録音の時代には珍しい演奏かもしれない。


ストラヴィンスキー:春の祭典

ストラヴィンスキー:春の祭典

 ついでにもう一枚。サー・ゲオルク・ショルティ指揮、シカゴ交響楽団の演奏(1976年録音)。ブーレーズと対照的に、オーケストラ全体が音の塊りとなって襲いかかってくる。もはやロックである。