第12講 泉鏡花 『歌行燈』(1)

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講義ノート

 講義の最中にとったノートをほぼそのまま写したものなので、文責はすべて kanimaster にあります。
 なお、本日の講義会場は和室のため、ホワイトボードがなく、ちゃんとノート出来なかった部分があります。

  • 泉鏡花は金沢出身。
  • 鏡花の本名は鏡太郎。
    • 父親は彫金師。加賀藩に仕えた。
      • 維新の時、幕府に味方した県は、廃藩置県の際に県名が変えられた。
    • 母親・鈴は加賀藩能楽師の家に生まれたが、江戸育ち。早世する。
  • 能楽について
    • 小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)、太鼓(たいこ)、笛(能管)。
    • ワキ……最初に出てくる。
    • シテ……主役。
    • 女役は歌舞伎と違って、女に見えてはいけないという決まりがある。
    • 能楽武家のものだった。
    • 下層町人は歌舞伎さえ見られなかった。
    • 江戸時代は現代よりもはるかに格差社会だった。生活も不便だった。
    • 田中優子杉浦日向子
    • 隠居というのは、跡継ぎがいるから成立する。
    • 能楽をまねた歌舞伎のことを松羽目物という。「勧進帳」など。
    • 能は儀式なので、元々拍手はしなかったのではないか。
    • 謡と仕舞。
    • 狂言師……途中で登場して、話の筋を説明する。
    • シテ方はシテのせりふしか知らない、筋すら知らない人もいる。
      • 昔の映画俳優はその場でせりふだけ渡されて撮影していた。映画が完成するまでどんな話なのか知らないのは普通だった。
  • 鏡花は明治6年生まれ。樋口一葉より一つ年下。
    • 母親と同名のすずという芸者と結婚した。
    • 日本的な人と思われているが、学生時代、英語は満点だった。(数学の成績は悪かった。)
    • 17歳のとき、尾崎紅葉に弟子入りしようと上京。だが、実際に入門したのは1年後。
    • 神経質。食べ物にはよく火を通してから食べた。
    • 犬が嫌い。
      • 谷崎潤一郎を訪ねたら、猫がたくさんいて大変だった。
      • 嫌犬権(けんけんけん)というのは現代において軽んじられている。
      • 犬猫が嫌いなひともいる。
      • kanimasterという人は、猫と同衾しているらしい。
  • 明治26年、『冠弥左衛門』 を発表。紅葉の助言によって完結、出版した。
    • 脚気のため帰郷している。
  • 明治27年、『義血侠血』……「瀧の白糸」という題で、新派で上演された。
    • 貧民に対する同情が強い。
  • 明治28年、『夜行巡査』、『外科室』
    • 『夜行巡査』 は悲惨小説と呼ばれている。
    • 『外科室』 は坂東玉三郎監督で映画化された。1時間弱の短い映画。
  • 鏡花はお化けを信じていた。
  • 鏡花は近代恋愛至上主義者。「親同士が決めた結婚に愛はない」と主張した。
  • 明治29年、『照葉狂言
  • 明治30年尾崎紅葉金色夜叉』 発表。
  • 明治36年、紅葉、36歳で胃癌で死去。
    • 源氏物語は軟弱だと言われていた。
    • 紅葉の没後に、すずと結婚。
  • 明治40年、『婦系図
    • 主人公・主税(ちから)はスリである。
    • 湯島の境内の場面、「別れろ切れろ……」というセリフは、鏡花が戯曲化するときに書き足したもの。
    • 登張竹風(とばりちくふう)
    • 高野聖』(明治33年)は日本的な作品と思われているが、古代ギリシアの「黄金のロバ」(メタモルフォーゼ)を参考にした。
    • 自然主義が猛威をふるった、と谷崎が書いた。
  • 明治41年、『草迷宮』は最高傑作。
    • 長年忘れられていたが、1960年代に澁澤龍彦が再評価した。
  • 明治43年、『歌行燈』、『白鷺』
    • 「白樺」創刊。
    • 大逆事件。弁護士・平出修。
    • 番町に住んだ。有島家が筋向いだった。
    • 里見とんは、鏡花を師と仰いだ。
    • 徳田秋声……通俗小説から自然主義へ。
      • 秋声が紅葉を貶したため、鏡花は大暴れ。殴りかかる。以後、絶交状態へ。
      • 鏡花の弟・泉斜汀(いずみ しゃてい)が秋声の所有する家に住んで、そこで死去。しかし、葬儀のときも和解は成立せず。
  • 昭和14年、鏡花没。
    • 秋声は「なぜ早く知らせなかった!」と嘆いた。