2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

クノー 『地下鉄のザジ』

「ザジ」得意の持ち役の中から簡単に見つけ出した厳かな態度でガブリエルは言いわたす。「本当の陸軍博物館と、本当のナポレオンの本当のお墓を見たいなら、伯父さんが連れてってあげるからね」 「ナポレオンけつ喰らえ」ザジは剣もほろろに。「ぜんぜん興味…

女性不信

パリにもどった岸本は、過去に出会った女たちのことを思い起こす。女学校の教え子だった勝子は他人のもとへ嫁ぎ、妊娠中のつわりが原因で1年後に死んだ。妻の園子もまた結婚してから12年後に突然亡くなった。彼が愛した女性は皆突然に彼の前から消えてしまう…

死者の祭り

1914年、世界大戦勃発。岸本は戦火のパリから、フランス中部の田舎町リモージュへ逃れる。そこへ、ビヨンクールの老婦人の亡くなったしらせが届く。彼女は英語を話す親日家で、岸本がフランスへ着いたばかりの頃、最初に彼を迎え入れた人であった。また、彼…

お茶の時間

岸本はフランスに向かう船の中で、顛末を告白する手紙を次兄義雄に書く。義雄からの返信には、すべて任せろただし金は出せと書かれている。岸本がパリに着いて数ヵ月後、節子は母親にも知らせず、郊外の産院で男の子を生む。だが、赤児の顔を一目見ただけで…

酒井順子 『女子と鉄道』

女子と鉄道 (光文社文庫)作者: 酒井順子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/07/09メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 25回この商品を含むブログ (20件) を見る 私も、全線乗りつぶしを目論むわけでもなければ、時刻表のバックナンバーを揃えるわけでもない…

チーズクッキー

新しいオーブンレンジが届いたので、試運転を兼ねてチーズクッキーを焼いてみた。 約40枚のクッキー生地を作るのに、パルメザンチーズを1本近く使う。トッピングにもパルメザンチーズ。あとアーモンドスライスを乗せる。 オーブンというのはどうしても癖があ…

手のひらをながめる

岸本捨吉は、二人の子供と節子の世話を次兄義雄に頼んで、ひとりフランスへ旅立つ準備をすすめる。彼は義雄に対して、節子のことを言い出せず、顔向けもできないまま、兄夫婦の上京を待たずにわざわざ神戸発の船を選んで出発しようとしていた。 しかし、突然…

石原千秋 『名作の書き出し 漱石から春樹まで』

名作の書き出し 漱石から春樹まで (光文社新書)作者: 石原千秋出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/09/17メディア: 新書購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (8件) を見る 「テクスト論」 の入門書 小説を読むとき、僕は基本的に「作者」を無視す…

自伝を読む

最近に筆を執り始めた草稿が岸本の机の上に置いてあった。それは自伝の一部とも言うべきものであった。彼の少年時代から青年時代に入ろうとする頃のことが書きかけてあった。恐らく自分に取ってはこれが筆の執り納めであるかも知れない、そんな心持が乱れた…

墓参り

キリスト教なのでお彼岸は関係ないのだが、連休中に青山墓地へ行った。ここにある教会墓地に、祖母が眠っているのである。 わりと最近になってから知ったのだが、この墓地には野口雨情が書いた 「赤い靴」 のモデルといわれる佐野きみ(1902-1911)が埋葬さ…

節子の妊娠

4人の子供を残して、妻が亡くなってから三年。四十二歳の男やもめ岸本捨吉は、上の二人の男の子を育てている。(下の二人は親類に預けている。)彼のところには、姪の節子が家の手伝いに住み込んでいる。 ある夕方、節子は岸本に近く来た。突然彼女は思い屈…

島崎藤村 『新生 前編』

新生 (前編) (岩波文庫)作者: 島崎藤村出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1970/05/16メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る 長編小説 『新生』 (大正7〜8年発表)にはいくつかのバージョンが存在するようだ。手元の本だけでも、以下の2種類ある…

島崎藤村と馬場孤蝶

芭蕉は五十一歳で死んだ。それに就いて近頃私の心を驚かしたことがある。友人の馬場君はその昔白金の學窓を一緒に卒業した仲間であるが、私よりは三つほど年嵩にあたる同君が、來年はもう五十一歳だ。馬場君のことを孤蝶翁と呼んで見たところで、誰も承知す…

須田町の銅像

戸川秋骨(1870-1939)という英文学者がいる。島崎藤村の同級生であり、『文學界』 同人メンバーだった人物である。その戸川が 「翻訳製造株式会社」 という随筆を書いている。 翻訳国と言へば日本の事物はすべて翻訳である。政治も、教育も、事業も何もかも…

樋口一葉の「断る力」

樋口一葉と『文學界』の男たち - 蟹亭奇譚の続き。 お母様はなぜ阪本を婿にするのを断ったのでしょう? http://b.hatena.ne.jp/matasaburo/20090918#bookmark-16092369 id:matasaburo さんから上のブコメをいただいた。これは断って当然だろう、と僕は思いこ…

麦湯少女まとめ

http://d.hatena.ne.jp/toroleo/20090918/1253243196 ※強調部は引用者による。 天保に書かれた『寛天見聞記』には「夏の夕方より、町ごとに麦湯という行灯を出だし、往来へ腰懸の涼み台をならべ、茶店を出すあり。これも近年の事にて、昔はなかりし也」とあ…

チェスタトン 『木曜日だった男』

やっと読み終わった。 どんでん返しが多く、ストーリーを要約できない。(要約するとネタばらしになってしまう。) 1908年の小説だが、全体の雰囲気は、夏目漱石 『倫敦塔』(1904年)に似ていると思う。 いや、どちらかというとモンティ・パイソンかもしれ…

平田禿木、酔っ払って樋口一葉を訪ねる

姉君来訪。ついで秀太郎も来る。長くあそびたり。日暮れて、馬場君、平田君袖をつらねて来らる。今日、高等中学同窓会のもよほしありて、平田ぬし其席につらなりしが、少し酒気をおびて、「一人寐ん事のをしく、孤蝶子を誘ひて君のもとをとひし成り」といふ…

樋口一葉と『文學界』の男たち

『にごりえ・たけくらべ』(新潮文庫)の巻末年譜に、次のようなことが書かれている。 明治二十二年(一八八九) 十七歳 三月、事業は失敗し破産状態となり、一家は神田区淡路町二丁目四番地へ移った。七月、健康を害した父は、死期が迫ったことを知り、妻子…

島崎藤村と樋口一葉

島崎藤村 『春』(明治41年発表) に、樋口一葉がちょっとだけ登場する。藤村たちが出していた同人雑誌 『文學界』 に一葉が加わったのだ。 舞台は明治28年。「堤さん」 と書かれている女性のモデルが一葉である。以下、岸本は藤村、菅は戸川秋骨、足立は馬…

島崎藤村とロダンとダンテ

当時の文学者はみな読んでいるものでしょうか? ロダンといい、藤村は彫刻が好きなのでしょうかしら? 『新生』という書物があるので、ダンテが好きなのだとは察しがついたのですが、あたってますか? isozakiaiの呟き置き場(旧:愛のカラクリ、AI日記) …

泉鏡花と馬場孤蝶

鏡花百物語集―文豪怪談傑作選・特別篇 (ちくま文庫)作者: 東雅夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/07/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (10件) を見る 『鏡花百物語集』 には座談会が2本掲載されていて、一つは昨日引用し…

『鏡花百物語集』

鏡花百物語集―文豪怪談傑作選・特別篇 (ちくま文庫)作者: 東雅夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/07/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (10件) を見る 大正から昭和初期にかけて、泉鏡花を中心に行われた 「怪談会」 とい…

チェスタトン 『木曜日だった男』

木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)作者: チェスタトン,南條竹則出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/05/13メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 74回この商品を含むブログ (69件) を見る 光文社古典新訳文庫の良いところは、注釈が左側のページ…

聖書の翻訳その他もろもろ

わが奇とするもの三あり否な四あり - 蟹亭奇譚 isozakiaiの呟き置き場(旧:愛のカラクリ、AI日記) Traduttore,traditore(ほんやくしゃはうらぎりもの)モンダイなどなど ものすごく濃ゆい言及をいただいたので、わくわくどきどきしながら記事を拝読しま…

わが奇とするもの三あり否な四あり

古い言葉に、この世にめずらしく思われるものが三つある。いや、四つある。空に飛ぶ鷲の路、磐(いわ)の上にはう蛇の路、海に走る舟の路、男の女に逢う路がそれである。…… 島崎藤村 「路」(岩波書店の雑誌『文学』の創刊に寄す)*1 「三つある。いや、四つ…

添い猫

夜になって、腕はさらに回復。もう万歳三唱できるレベルになっている。(でも頭がぼーっとしている。) 昨夜はさすがに安眠できず、途中で何度も目が覚めた。涼しくなってきたこともあり、僕のおなかに猫がぴったり寄り添って寝ているのだが、ちょっと待てよ…

病院受診

右腕が上がらない - 蟹亭奇譚の続き。 昨日も病院へ行ったのだけれど、腕が上がらなくなったのはその直後からである。元々、麻酔薬を用いた治療を行っているのだが、その麻酔が効きすぎてしまったということらしい。数日で全快するだろうとのこと。出来るだ…

右腕が上がらない

夕方頃から、右腕が上がらなくなった。肩に力が入らない状態で、上腕が思うように動かせない。痛みはなし。肘から先の動きはなんともないし、指先が痺れるなどの症状もない。右腕に左手を添えて持ち上げる分には問題なし。 明日は病院受診予定。(ブログに書…

9/9 ミイ

すっかり元気になりました。