2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

夏目漱石 『虞美人草』

『虞美人草』は、モーツァルトのオペラに似ている。 主に六人の男女が登場し、派手な恋の物語を展開する様は、『フィガロの結婚』を思わせるし、作中のきっぱりとした善悪の区別、ヒロイン・藤尾と彼女の母親の存在は、『魔笛』のヒロイン・パミーナとその母…

夏目漱石 『坊っちゃん』

新潮文庫版 『坊っちゃん』の巻末の解説に、こんなことが書かれている。 『坊っちゃん』は576字詰原稿用紙149枚(400字詰換算215枚)に執筆された。 執筆期間は1週間前後と推定される。 原稿には消しや直しを行った箇所がきわめて少ない。 『直筆で読む「坊…

夏目漱石 『門』

『門』 は地味な小説である。 『三四郎』、『それから』 に続く漱石の前期三部作の完結編と呼ばれているが、ようするに“『それから』 の、それから”、前作のおまけ扱いである。しかし、本作は決しておまけレベルの小説ではなく、一個の独立した名編として読…

夏目漱石 『それから』

「漱石の小説の中から一番好きなものを一つだけ選べ」と言われたら、あなたはどの作品を挙げるだろうか? 『我輩』? 『こころ』? 『明暗』? だいたいそのあたりに落ち着くかもしれない。 しかし、「好きな漱石作品を二つ(または三つ)選べ」と言われたら…